五味
提供: 新纂浄土宗大辞典
ごみ/五味
中国天台宗智顗が設けた「五時八教」(天台宗の教相判釈・教学綱要)における「五時」に対する譬喩説。「五時」の発展段階を、乳から醍醐味へ至る味の高まりに対応させ喩えたもの。五時八教とは①化儀四教(釈尊の説法形式)、②化法四教(釈尊の説法内容)、③五時(釈尊一代の説法を五期に分類)である。このうち③五時の発展段階を喩えて五味とする。その五時とは、①華厳時(華厳経)、②鹿苑時(阿含経)、③方等時(各種大乗経)、④般若時(般若経)、⑤法華涅槃時(法華・涅槃経)である。五味とは①乳味、②酪味(凝乳)、③生酥味(作り立てのバター)、④熟酥味(生酥の精製物)、⑤醍醐味(最高味)であり、これをそれぞれ五時に対応させる。このようにして自宗の『法華経』を最高味に譬え位置づけている。この譬喩の出典先の一つに『大般涅槃経』がある。すなわち、「善男子よ、譬えば牛より乳を出し、乳より酪を出し、酪より生酥を出し、生酥より熟酥を出し、熟酥より醍醐を出すが如し。醍醐最上なり。若し服せば、衆病皆除く。あらゆる諸薬、悉く其中に入りたり」([1]とある。
【参照項目】➡五時八教
【執筆者:中御門敬教】