かさいねんぶつ／葛西念仏

１江戸時代、武蔵国葛西の農夫が、笛・鉦・太鼓の囃子はやしにつれて念仏を称えながら踊り歩いたもの。葛西踊おどりともいう。『絵本詞ことば乃花』（一七九七）には喜多川歌麿が葛西踊を描き、宿屋飯盛やどやのめしもり（石川雅望まさもちの狂歌師としての名）が「くささうな　葛西のばゞの　おどる身は　左ねぢりに　なるぞ　おかしき」と狂歌を記している。『江戸川区史』三（七一五、江戸川区、一九七六）によると、江戸方面の念仏踊りは葛西念仏、鹿島おどり、泡斎ほうさい念仏などとも称したといわれている。また、「葛西のおしゃらく」はこの念仏踊りの系統にあり、千葉県では「小こ念仏」といい、千葉県浦安と東京都江戸川区では「おしゃらく」と称したとする。２歌舞伎下座音楽の一つ。江戸葛西村の念仏講の囃子をリズム化したもので、太鼓や松虫などの鳴物を打ち囃はやす曲。寺に縁のある場面の立ち回りや殺しで、凄惨な場面を音楽的に美化するために「葛西念仏合方あいかた」として演奏する。「法界坊」の土手場、「切られお富」の殺しの場、「累かさね」の土橋殺し場に用いられる。

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【参考】望月太意之助『歌舞伎の下座音楽』（演劇出版社、一九九七）

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【執筆者：西城宗隆】