輪蔵
提供: 新纂浄土宗大辞典
りんぞう／輪蔵
寺院の経蔵内にある、一切経を収蔵する八角形の書棚。中央の心柱を支えとする回転書架。釈尊の転法輪に由来する。書棚内には引き出しのついた木箱があり経函が納められる。信心をもってこの書架を一回転させると、一切経読誦の功徳があるという（『釈門正統』三、塔廟志〔続蔵七五〕）。一説によると、輪蔵の創始者は中国南北朝の傅大士という。経蔵内には、彼を中央に二人の息子（普建・普成）の像が安置される。輪蔵は絵画や彫刻によって意匠が凝らされ、貴重な仏教美術工芸でもある。禅宗寺院に多く存在する。構造の詳細を知恩院輪蔵を例にすると以下のとおり。輪蔵の八面が吽形、広目天（西）、帝釈天、多聞天（北）、阿形、持国天（東）、梵天、増長天（南）に割り振られ、各面には縦一二段×横五列の木箱がある。それには千字文が付され、輪蔵へ宋版一切経を納める順番を指定する。岐阜県の安国寺には、最古の輪蔵をもつ経蔵（国宝、応永一五年〔一四〇八〕）がある。知恩院には、三門などとともに徳川秀忠によって元和七年（一六二一）に建立されたもの（国重要文化財）が現存する。
【執筆者：中御門敬教】
