欲界は心が動揺散乱するところであるということ。三界のうち、色界と無色界とが三昧に入って心が散動しない定心の地であるのに対して、欲界は心が散動する散心の地であることをいう。『俱舎論記』七には、「欲界の散地の散〔心〕と生得〔心〕は強」(正蔵四一・一四三下)いと述べ、欲界が散心の地であることを示す。法然は明遍との散心問答で「欲界散地に生まれたる者はみな散心あり。譬えば人界の生を受けたる者の目鼻のあるがごとし」(聖典四・四七六/昭法全六九三)といっている。
【参照項目】➡三界、定心・散心
【執筆者:長尾隆寛】