平家物語
提供: 新纂浄土宗大辞典
へいけものがたり/平家物語
平清盛を中心とする平氏一族の栄華、そして没落を描いた軍記物。平家物語は後世の呼称であり、古来『治承物語』と呼ばれていたようである。作者については、『徒然草』によると信濃前司行長が生仏に語らせたとし、その行長が九条兼実に仕えていた家司藤原顕時の孫であるとか、法然門下の西仏という僧によってまとめられたなどと諸説があるが、未詳とすべきである。和漢混交文の洗練された文章で琵琶法師によって語られ、諸本によって書名、巻数、内容がことなるが、没落していく平安貴族と台頭する武家との関係を物語るもので、一四世紀半ばに校訂された覚一本(一二巻)、江戸時代に出版された流布本(灌頂巻とも一三巻)が読まれた。記事は法然の時代であり、法然と平重衡の関係について伝えるところがあるが、史実と語りと伝説との扱いに注意を要する。
【所収】『新日本古典文学大系』四四~四五(岩波書店)
【執筆者:魚尾孝久】