衆生から苦しみを抜き取り、楽を与えること。慈悲の形相とされる。すなわち抜苦は悲、与楽は慈の形相である。与楽抜苦ともいわれる。「抜苦与楽」の出典には『四十華厳』などがあげられるが、慈や悲を説明するために用いられる「抜苦」や「与楽」の例は枚挙にいとまがない。多くの経論において、慈悲とは苦しみを取り除き安らぎを与えるものと理解され、その最大の実践者を仏とみなしている。それゆえ仏の持つ慈悲を特に大慈悲ともいう。また法然は四十八願の一々の願には、抜苦与楽の義があると理解している。
【資料】『無量寿経釈』
【参照項目】➡慈悲、大慈悲
【執筆者:石田一裕】