田村円澄著。昭和三四年(一九五九)一一月、平楽寺書店刊。著者が昭和二五年(一九五〇)から同三四年までに発表した論文のうち、浄土教に関連する一七篇を載せており、中世から近代に至るまで、広く浄土教思想の受容・変遷を論じている。特に、法然の専修念仏については、その受容層は農民や都市下層民といった庶民階層であり、彼らを既存の聖道門諸宗に対する「反古代闘争」に駆り立てる契機となった、と位置付けている点に特徴がある。
【執筆者:坪井剛】