虚仮念仏
提供: 新纂浄土宗大辞典
こけねんぶつ/虚仮念仏
自らが尊い行をしているとして憍慢の心を抱きながら修する念仏のこと。または、阿弥陀仏の本願を信じず、往生浄土以外の自身の欲が満たされることを願って修する念仏のこと。利養の念仏、貪欲の念仏、雑毒の念仏、誑惑の念仏と同意。聖光の『西宗要』に「自行の念仏に於て憍慢をなすと云うは虚仮の念仏これなり。虚仮と云うは或は名聞のため、或は利養のために念仏を申し、また人に請ぜられて申し歩いて布施を打ち取って我身の利養となす」(浄全一〇・二四一上)といい、また『念仏三心要集』に「貪欲の故に利を思いて申す念仏は利養の念仏なり。また貪欲の念仏なり。これを雑毒の念仏と云い、これを虚仮の念仏と云い、またはこれを誑惑の念仏と云うなり」(浄全一〇・三八八下)というのがそれである。聖光はこれを厳しく戒め、疑いの心をおこさずに、往生浄土を願って念仏行に励むべきであると各所で説示している。
【資料】『徹選択集』(浄全七)、『念仏三心要集』(浄全一〇)
【参考】梶村昇『聖光と良忠』(浄土宗、二〇〇八)
【執筆者:郡嶋昭示】