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天国

提供: 新纂浄土宗大辞典

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てんごく/天国

天上の他界を想定する天界信仰に基礎づけられる、空間的な彼方の世界。神々や祝福された者たちがいる場所ないし状態を言う。比喩的に至福の理想郷・楽園の意味で用いることもあり、その場合はしばしば地獄と対比される。ギリシア神話のエーリュシオンは神々と英雄がおり死後善人がそこに行くとされ、ハデスは悪人が行く場所とされている。ヘブライ語のシェオルもハデスと同様の場所とされる。キリスト教の新約聖書では、天は神と天使の住まいとされ、ハデスとならんでゲヘナが悪人の住まいとされた。キリスト教は、ある時期天国地獄信仰を強調することもあったが、概してその定義において曖昧である。偉大なキリスト教思想家は天国地獄を、場所というよりはむしろ、魂の状態として語ることが多い。イスラム教のコーランでは、天国は一般にジャンナ(楽園)と呼ばれ、信仰を認められたイスラム教徒が、死後そこで無上の愉楽を楽しむ。仏教天国である「極楽」は梵語のスカーバティー(幸福のある土地)の訳語であるが、中国において浄土信仰が展開すると、もともとは西方にあると説かれた極楽が天上にあると解釈された。


【参考】ミリアム・ヴァン・スコット著/奥山倫明監修『天国と地獄の事典』(原書房、二〇〇六)、ジャック・ル・ゴッフ著/渡辺香根夫・内田洋訳『煉獄の誕生』(『叢書ウニベルシタス』二三六、法政大学出版局、一九八八)、棚瀬襄爾『他界観念の原始形態』(『東南アジア研究叢書』一、中西印刷、一九六六)、牧野信也『創造と終末』(新泉社、一九七二)


【参照項目】➡極楽


【執筆者:挽地茂男】