「近代仏教」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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2018年3月30日 (金) 06:22時点における最新版
きんだいぶっきょう/近代仏教
日本における近代仏教は、おおまかに幕末期から昭和二〇年(一九四五)頃までのことを指すが、明確な時期区分および具体的内容については様々な見解があり、明確な定義は存在していない。
[研究史における近代仏教]
戦前期においては、明治期の仏教を呼称する際「明治仏教」という語が用いられていたが、そこには大きく分けて、衰退史観、復興史観と呼びうる二つの歴史観があった。前者は近世仏教衰退史観の延長で「明治仏教」を捉える史観、後者は廃仏毀釈からの復興として「明治仏教」を捉える史観である。「明治仏教」を衰退の歴史と捉えるか、復興の歴史と捉えるかは識者によって見解が異なっている。戦後になると吉田久一、柏原祐泉、池田英俊らによって、日本近代仏教史が開拓される。そこでは、個の確立、理性的信仰の獲得といった観点から近代日本における仏教的な信仰や活動に着目した研究がなされた。これらは近代主義的な価値観に基づく研究であり、近代日本における仏教の変化・変革に着目していた。しかし近年では、これらの研究手法を批判的に継承する動きが出てきた。日本の近代仏教を日本仏教史ではなく近代史という世界史上の流れの中で捉えようという動きである。
[近代仏教に含まれる要素]
近代仏教に明確な定義が存在していない理由の一つとして、それに含まれる要素が多様であることが挙げられる。仏教教団から見た場合、国家との関係、教団組織や宗侶育成の改革、国内・海外布教(開教)、社会事業活動、戦没者慰霊などが要素として考えられうる。教団外に目を向けると、近代的宗教制度、キリスト教や新しい宗教概念の流入、信仰に対する意識変化、在家発の新しい仏教思想および運動の展開などがある。このように近代仏教を考える上では様々な論点や視点が存在する。近代仏教は、発展途上の研究分野・対象といえるが、現代の仏教を考える際に不可欠であることは間違いない。
【参考】吉田久一『近現代仏教の歴史』(筑摩書房、一九九六)、末木文美士『近代日本の思想・再考』一、二(トランスビュー、二〇〇四)、『季刊日本思想史』七五(ぺりかん社、二〇〇九)
【執筆者:江島尚俊】