「履物」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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2018年3月30日 (金) 06:31時点における版
はきもの/履物
足全体を入れる「はきもの」を履という。古来、沓、舃、靴などと呼んで、同じはきものでも、鼻緒の付いた下駄や草履などの呼び名である「屧」とは区別していた。履には素材により、糸鞋(伊止乃久都)・麻鞋(乎久豆)・木履(紀具都)などがあり、時代・官職・天候・年齢などに応じてさまざまな履が用いられた。『啓蒙随録』によれば「履に和と漢との両用があり、吾が宗および天台、真言等の用いるのは和様である。禅宗の用いるのは漢様である…和様は官人が平常用いる浅履、漢様は紋緞製である(趣意)」(初編二・二八オ)という。浄土宗では正式な儀式に用いる沓を履物といい、舃、木履の二種があり、舃は導師が用いるものである。舃の字には「ぬいぐつ」「くつ」などの古訓があり、古来、唐(中国)で用いられていた、二重底で先端がやや尖った、布製の沓がその原型とされる。和名を「木宇良乃久豆」ともいい、古くは桐などの木地の外側に帛布を張ったものが用いられたが、最近は和紙を特殊加工した型に金襴などの布を張って作られている。木履は式衆・大衆の履物である。古くは革製であったが、平安後期以降は桐の木地に黒漆塗りを施し、内側に紙を貼るようになった。足の甲に当てる沓敷には、表袴と同じ布裂を用いたという。先端が丸みを帯びていることから、鼻高(通称はなだか)ともいわれる。これに金襴の布を貼ったものを草鞋という。現在では、土間や石敷の本堂が少ないため、これらの履物を堂内で使用することはまれで、晋山式や落慶式の庭儀式(練り行列)など、屋外の儀式に導師が舃を履く程度である。略儀には、白緒の草履を用いる。草履は、本来身近な植物を編んで、鼻緒を付けただけの質素なはきものであったが、江戸時代以降、裏を重ね、あるいは上等な表や鼻緒を付けるなど、高級な草履(雪駄)が考案された。
【執筆者:熊井康雄】