「乾闥婆城」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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2018年3月30日 (金) 06:23時点における最新版
けんだつばじょう/乾闥婆城
乾闥婆によって空間に幻のごとく化作された都城、の意味。そこから転じて「蜃気楼」を指す。実在しないものの譬え。原語はⓈgandharva-nagara(ガンダルヴァ・ナガラ)。「乾闥婆」はⓈgandharvaの音写、「けんだっば」とも発音する。「城」はⓈnagaraの意訳。その他の訳語に尋香城、乾闥城がある。乾闥婆には①天龍八部衆の一人である音楽神、②中有の本体(五蘊)、③幻術者などの意味がある。特に大乗仏教においては空性の八喩(長尾雅人訳『摂大乗論』〔三六二頁〕によれば、幻術、陽炎、夢、光の影、映像、応霊、水中の月、化作)と共によく知られる。『三昧王経』には「たとえば、ガンダルヴァの都城、蜃気楼、あるいは幻影、夢などが実体としては空なるものであり、表相による妄想であるように、そのようにすべてのものを知るべきである」(田村智淳訳、一五六頁)とある。
【参考】長尾雅人『摂大乗論—和訳と注解—』上(講談社、一九八二)、田村智淳訳『三昧王経』Ⅰ(『大乗仏典』一〇、中央公論社、一九七五・一九八〇)
【執筆者:中御門敬教】