浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0018A01: | 十二日に。山門の使者大谷に下來て廟堂を破んと |
J17_0018A02: | す。爾時京都の守護。修理亮平時氏。このことを洩 |
J17_0018A03: | 聞て。右兵衛尉内藤五郞兵衞藤原盛政入道法名西佛を差遣す。盛 |
J17_0018A04: | 政。子息一人を相具して。まかりむかつて。縱公家 |
J17_0018A05: | の御許ありといふとも。子細を武家に觸申すべきの |
J17_0018A06: | 所に。左右なく。是を執行るるの條。もとも狼藉な |
J17_0018A07: | り。はなはだ自由なり。若制法にかかはらずば。武 |
J17_0018A08: | 家の成敗にまかすべきよし。頻に禁止すといへども。 |
J17_0018A09: | 山門の使敢て相隨ざりければ。盛政入道高聲に喚で |
J17_0018A10: | 云。醫王山王も許給へ。念佛守護の四天大王龍神八 |
J17_0018A11: | 部。護法天童に。代りたてまつりて。弟子西佛。魔 |
J17_0018A12: | 縁を排侍らん。これ定て天魔波旬癡侶に託し。僞て |
J17_0018A13: | 山門三千の使と號して。留難を致なるべし。豈圖き |
J17_0018A14: | や。戰場の筵をもて往生極樂の門出とし。凶惡の輩 |
J17_0018A15: | をもて臨終知識の因縁となすべしとは。但汝等各南 |
J17_0018A16: | 無阿彌陀佛と唱よ。一一に壽命を斷べし。顯には關 |
J17_0018A17: | 東の御家人として。弓箭を擕て狼藉を防。冥には西 |
J17_0018B18: | 土の念佛者として師恩を報じて凶徒を罸すべしと。 |
J17_0018B19: | 命を捨てて馳廻ければ。面を向人なく蛛の子を散が |
J17_0018B20: | ごとく。皆悉逃失けり。宇都宮入道。俄なるに。五 |
J17_0018B21: | 六百騎を催具して馳參じ。廟堂を守護したてまつり |
J17_0018B22: | て。哀なるかな。昔は名利の爲に關東の將軍に侍衞 |
J17_0018B23: | し。今は菩提の爲に西方の上人を守護すと云ければ。 |
J17_0018B24: | 萬人此詞を聞て。皆哀を催けり。終に廟墳を改て。 |
J17_0018B25: | 嵯峨の二尊院に隱置ぬ。路次の程は。守護の兵二千 |
J17_0018B26: | 餘騎。前後にかこみて。わたしたてまつりき。此則 |
J17_0018B27: | 極重惡人の信順の心なきをば。逆縁を結ばしめ。來 |
J17_0018B28: | 世に導給はん。善巧方便ならん。在世の慈訓。滅後 |
J17_0018B29: | の法流。順逆の二縁。利益まことに廣し。具に記す |
J17_0018B30: | にあたはず。各見聞に任るのみ。 |
J17_0018B31: | 上人入滅時。弟子生年四十六歳。數年積功親承淨敎子。 |
J17_0018B32: | |
J17_0018B33: | |
J17_0018B34: | 黑谷源空上人傳終 |