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J2360 十六門記 聖覚 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0018A01: 十二日に。山門の使者大谷に下來て廟堂を破んと
J17_0018A02: す。爾時京都の守護。修理亮平時氏。このことを洩
J17_0018A03: 聞て。右兵衛尉内藤五郞兵衞藤原盛政入道法名西佛を差遣す。盛
J17_0018A04: 政。子息一人を相具して。まかりむかつて。縱公家
J17_0018A05: の御許ありといふとも。子細を武家に觸申すべきの
J17_0018A06: 所に。左右なく。是を執行るるの條。もとも狼藉な
J17_0018A07: り。はなはだ自由なり。若制法にかかはらずば。武
J17_0018A08: 家の成敗にまかすべきよし。頻に禁止すといへども。
J17_0018A09: 山門の使敢て相隨ざりければ。盛政入道高聲に喚で
J17_0018A10: 云。醫王山王も許給へ。念佛守護の四天大王龍神八
J17_0018A11: 部。護法天童に。代りたてまつりて。弟子西佛。魔
J17_0018A12: 縁を排侍らん。これ定て天魔波旬癡侶に託し。僞て
J17_0018A13: 山門三千の使と號して。留難を致なるべし。豈圖き
J17_0018A14: や。戰場の筵をもて往生極樂の門出とし。凶惡の輩
J17_0018A15: をもて臨終知識の因縁となすべしとは。但汝等各南
J17_0018A16: 無阿彌陀佛と唱よ。一一に壽命を斷べし。顯には關
J17_0018A17: 東の御家人として。弓箭を擕て狼藉を防。冥には西
J17_0018B18: 土の念佛者として師恩を報じて凶徒を罸すべしと。
J17_0018B19: 命を捨てて馳廻ければ。面を向人なく蛛の子を散が
J17_0018B20: ごとく。皆悉逃失けり。宇都宮入道。俄なるに。五
J17_0018B21: 六百騎を催具して馳參じ。廟堂を守護したてまつり
J17_0018B22: て。哀なるかな。昔は名利の爲に關東の將軍に侍衞
J17_0018B23: し。今は菩提の爲に西方の上人を守護すと云ければ。
J17_0018B24: 萬人此詞を聞て。皆哀を催けり。終に廟墳を改て。
J17_0018B25: 嵯峨の二尊院に隱置ぬ。路次の程は。守護の兵二千
J17_0018B26: 餘騎。前後にかこみて。わたしたてまつりき。此則
J17_0018B27: 極重惡人の信順の心なきをば。逆縁を結ばしめ。來
J17_0018B28: 世に導給はん。善巧方便ならん。在世の慈訓。滅後
J17_0018B29: の法流。順逆の二縁。利益まことに廣し。具に記す
J17_0018B30: にあたはず。各見聞に任るのみ。
J17_0018B31: 上人入滅時。弟子生年四十六歳。數年積功親承淨敎子。
J17_0018B32:
J17_0018B33:
J17_0018B34: 黑谷源空上人傳

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