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J1410 拾遺和語灯録 了恵輯緑 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0632A01: わか身をは善根薄少なりと信じて。本願をたのみ念
J09_0632A02: 佛せよとすすめ給へり。經に。一たひ名號をとなふ
J09_0632A03: るに。大利を得とす。又すなはち無上の功德を得と
J09_0632A04: とけり。いかにいはんや念念相續せんをや。しかれ
J09_0632A05: は善根なけれはとて。念佛往生をうたかふへからす。
J09_0632A06: 又念佛すれとも。心の猛利ならさる事は。末世の凡
J09_0632A07: 夫のなれるくせ也。その心の中に。又彌陀をたのむ
J09_0632A08: 心のなきにしもあらす。たとへは主君の恩ををもく
J09_0632A09: する心はあれとも。みやつかひする時。いささかもの
J09_0632A10: うき事のあるがことし。ものうしといへとも。恩を
J09_0632A11: しる心のなきにはあらさるがことし。念佛にだにも
J09_0632A12: 猛利ならすは。いつれの行にか猛利ならん。いづれ
J09_0632A13: も猛利ならされはとて。一生むなしくすきは。その
J09_0632A14: をはりをいかんたとひ猛利ならざるに似たれとも。
J09_0632A15: これを修せんとおもふ心あるは。こころさしのしる
J09_0632A16: しなるへし。このめはをのつから發心すといふ事あ
J09_0632A17: り。功をつみ德をかさぬれは。時時猛利の心もいで
J09_0632B18: くる也。されははしめよりその心なけれはとてむな
J09_0632B19: しくすぎは。生涯いたつらにくれなん事。後悔さきに
J09_0632B20: たつへからす。なかんつく善導の御義には。散動の
J09_0632B21: 機をえらはざる也。しかれは猛利の心なけれはとて
J09_0632B22: 往生をうたかふへからす。又世間のいとなみひまな
J09_0632B23: けれはこそ。念佛の行をは修すへけれ。そのゆへは男
J09_0632B24: 女貴賤。行住坐臥をえらはす。時處諸縁を論せす。
J09_0632B25: 是を修するにかたしとせす。乃至臨終にも。その便
J09_0632B26: 宜をえたる事念佛にはしかすといへり。餘の行は。
J09_0632B27: まことに世間忩忩の中にしては修しかたし。念佛の
J09_0632B28: 行にかきりては在家出家をえらはす。有智無智をい
J09_0632B29: はす。稱念するにたよりあり。世間の事にさへられ
J09_0632B30: て。念佛往生をとげざるへからす。ただし詮ずると
J09_0632B31: ころ。無道心のいたすところ也。されはとて世間を
J09_0632B32: すてざるものゆへ。世間にはばかりて念佛せずは。
J09_0632B33: わか身にたのむところなく。心のうちにつのるとこ
J09_0632B34: ろなし。うけかたき人身をうけ。あひかたき佛法に

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