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J1400 和語灯録 了恵輯緑 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0543A01: ちかしといへとも。いかかゆくへき。今日さためて死
J09_0543A02: せん事うたかひなし。まさに歸らんとおもへは。群
J09_0543A03: 賊惡獸やうやくきたりせまる。まさに南北にさりは
J09_0543A04: しらんとおもへは。惡獸毒蟲きをひきたりて我にむ
J09_0543A05: かふ。まさに西にむかひて道をたつねてさらんとお
J09_0543A06: もへは。復をそらくは此二つの河にをちぬへしと。
J09_0543A07: 此時をそるる事いふへからす。即みづから思念すら
J09_0543A08: く。われいまかへるとも死し。またさるとも死せ
J09_0543A09: ん。一種として死をまぬかれさるものなり。われむ
J09_0543A10: しろ此道を尋ねてさきにむかひてさらん。すてに此
J09_0543A11: みちありかならすわたるへし。此思をなす時。東の
J09_0543A12: 岸にたちまちに人のすすむる聲をきく。きみたた决
J09_0543A13: 定して此道を尋ねてゆけ。かならす死の難なけん。
J09_0543A14: もし住せは即死なんと。又西の岸のうへに人ありて
J09_0543A15: よはひていはく。なんぢ一心にたたしく念して。み
J09_0543A16: ちをたづねて直にすすみて。疑怯退の心をなさざれ
J09_0543A17: と。あるひは一分二分ゆくに群賊等よはひていは
J09_0543B18: く。きみかへりきたれ。この道ははけしくあしき道
J09_0543B19: なり。すくる事をうへからす。死なん事うたかひな
J09_0543B20: し。我等すべて惡心なしと。此人よはふこゑを聞と
J09_0543B21: いへとも。かへりみず。直にすすみて道を念してゆ
J09_0543B22: くに。須臾にすなはち西の岸にいたりて。ながくも
J09_0543B23: ろもろの難をはなる。善友あひむかひてよろこひ
J09_0543B24: やむ事なし。是はたとへ也。次にたとへを合すとい
J09_0543B25: ふは。東の岸といふは。即此娑婆の火宅にたとふる
J09_0543B26: 也。西の岸といふは。即極樂寳國にたとふるなり。
J09_0543B27: 群賊惡獸いつはりしたしむといふは。即衆生の六根
J09_0543B28: 六識六塵五陰四大なり。人なき空逈の澤といふは。
J09_0543B29: 即つねに惡友にしたがひて。眞の善知識にあはざる
J09_0543B30: 也。水火の二河といふは。即衆生の貪愛は水のこと
J09_0543B31: く。瞋恚は火のことくなるにたとふる也。中間の白
J09_0543B32: 道四五寸といふは。即衆生の貪瞋惱煩の中に。よく
J09_0543B33: 淸淨の願往生の心を生する也。。貪瞋こはきによるか
J09_0543B34: ゆへに。すなはち水火のことしとたとふるなり。願

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