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J1370 一枚起請講説 法洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0295A01: 科なり。本文の中に。誓言を立給ひて。此所に誓相を
J09_0295A02: あらはし。兩手の跡をとどめ玉ひたるなり。總じて。
J09_0295A03: 上古は物の證には。手印をなすこと。今時の印判の如。
J09_0295A04: 書キ物に。印判したるを。手形と云も。是より云ことなり尤半印にてもすむべきを。兩
J09_0295A05: 手を以。印し玉ふは。いかにと云に。是一大事中の一
J09_0295A06: 大事。念佛往生と云に。過たるなければ。尤叮重を
J09_0295A07: 顯し玉ふなり。例せば如來の舌證に。小事には鼻端
J09_0295A08: を覆ひ。大事は髮際に至り。至極の大事を證するに
J09_0295A09: は三千大千世界を覆ひ玉ふ。六方の諸佛念佛證誠の義可知大師叮重
J09_0295A10: の兩印凖して知るべし云云。又聽衆をして此御遺誓
J09_0295A11: を。信受せしむる爲に。一義を設て云はば。安心と
J09_0295A12: 起行とに對して。兩印をなし玉ふなり。文中にて安
J09_0295A13: 心起行を指し示さば。上にも云如。疑なく思ひ取と
J09_0295A14: 云が。安心。申外に別の子細候はずと云と。唯一向
J09_0295A15: に念佛すべしとあるが。起行なり。所詮は。申せばゆ
J09_0295A16: けると决著して。分分に唱ふるが。安心起行具足し
J09_0295A17: たる。決定順次往生の人なれば。其通りに落著せよ
J09_0295B18: と云が。此御遺誓の御勸め。是に少しも相違なひと
J09_0295B19: 云證據に。兩手を押玉いたるに依て。爲證以兩手
J09_0295B20: 印とあるなり。所詮我等が短き心で。大師の深重の
J09_0295B21: 御慈悲の程を。窺ひ窮むることはならねども。此一事を
J09_0295B22: 以て餘を推計るべし。上にも云通り。此御遺誓を記
J09_0295B23: し玉ふ。大師の御壽算はと云へば。滿八十の御老年。
J09_0295B24: 其上御病中と云ひ。餘寒も烈しき正月下旬。殊に御
J09_0295B25: 臨末三日已前に。兩の御手を。硯にさし入れさせ玉
J09_0295B26: ひし御心の切なるを。思やり奉るべし。箇樣になし
J09_0295B27: 玉ふは何故ぞ。皆御滅後の我我に。安心起行あやま
J09_0295B28: らず。順次往生させ度思し召。大慈大悲の一偏なれ
J09_0295B29: ば。若これをも信ずまじくは。又何をか信ぜん。世
J09_0295B30: 敎にすら。恩を被て恩を知らざるは。人面獸心と誡
J09_0295B31: しめ。君が一日の恩に。妾が百年の身をすつるを。
J09_0295B32: 美談とするに非や。されども。大師の御慈悲を報ふ
J09_0295B33: に。身をも命をもすて。妻子財寳をも。捨つると云こと
J09_0295B34: ならば。末世下根の劣機なれば。叶はずと云こともある

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