浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J09_0295A01: | 科なり。本文の中に。誓言を立給ひて。此所に誓相を |
J09_0295A02: | あらはし。兩手の跡をとどめ玉ひたるなり。總じて。 |
J09_0295A03: | 上古は物の證には。手印をなすこと。今時の印判の如。 |
J09_0295A04: | 書キ物に。印判したるを。手形と云も。是より云ことなり尤半印にてもすむべきを。兩 |
J09_0295A05: | 手を以。印し玉ふは。いかにと云に。是一大事中の一 |
J09_0295A06: | 大事。念佛往生と云に。過たるなければ。尤叮重を |
J09_0295A07: | 顯し玉ふなり。例せば如來の舌證に。小事には鼻端 |
J09_0295A08: | を覆ひ。大事は髮際に至り。至極の大事を證するに |
J09_0295A09: | は三千大千世界を覆ひ玉ふ。六方の諸佛念佛證誠の義可知大師叮重 |
J09_0295A10: | の兩印凖して知るべし云云。又聽衆をして此御遺誓 |
J09_0295A11: | を。信受せしむる爲に。一義を設て云はば。安心と |
J09_0295A12: | 起行とに對して。兩印をなし玉ふなり。文中にて安 |
J09_0295A13: | 心起行を指し示さば。上にも云如。疑なく思ひ取と |
J09_0295A14: | 云が。安心。申外に別の子細候はずと云と。唯一向 |
J09_0295A15: | に念佛すべしとあるが。起行なり。所詮は。申せばゆ |
J09_0295A16: | けると决著して。分分に唱ふるが。安心起行具足し |
J09_0295A17: | たる。決定順次往生の人なれば。其通りに落著せよ |
J09_0295B18: | と云が。此御遺誓の御勸め。是に少しも相違なひと |
J09_0295B19: | 云證據に。兩手を押玉いたるに依て。爲證以兩手 |
J09_0295B20: | 印とあるなり。所詮我等が短き心で。大師の深重の |
J09_0295B21: | 御慈悲の程を。窺ひ窮むることはならねども。此一事を |
J09_0295B22: | 以て餘を推計るべし。上にも云通り。此御遺誓を記 |
J09_0295B23: | し玉ふ。大師の御壽算はと云へば。滿八十の御老年。 |
J09_0295B24: | 其上御病中と云ひ。餘寒も烈しき正月下旬。殊に御 |
J09_0295B25: | 臨末三日已前に。兩の御手を。硯にさし入れさせ玉 |
J09_0295B26: | ひし御心の切なるを。思やり奉るべし。箇樣になし |
J09_0295B27: | 玉ふは何故ぞ。皆御滅後の我我に。安心起行あやま |
J09_0295B28: | らず。順次往生させ度思し召。大慈大悲の一偏なれ |
J09_0295B29: | ば。若これをも信ずまじくは。又何をか信ぜん。世 |
J09_0295B30: | 敎にすら。恩を被て恩を知らざるは。人面獸心と誡 |
J09_0295B31: | しめ。君が一日の恩に。妾が百年の身をすつるを。 |
J09_0295B32: | 美談とするに非や。されども。大師の御慈悲を報ふ |
J09_0295B33: | に。身をも命をもすて。妻子財寳をも。捨つると云こと |
J09_0295B34: | ならば。末世下根の劣機なれば。叶はずと云こともある |