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J1320 吉水遺誓諺論 忍澂 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0014A01: 會して御遺誓の宗義を立るを要とす。みだりに他宗
J09_0014A02: の心行を難ずるに及ばざるこれ此重の意なり。
J09_0014A03: 第五重は。念佛の行者。もし背宗の徒に。御遺誓を
J09_0014A04: 異解せられ。兼て安心起行を惑亂せられて。すずろ
J09_0014A05: に鎭西の相承に疑をおこし。願行相續の稱名を懈た
J09_0014A06: る人のためには。段段ごとに具さに背徒の疑難を擧
J09_0014A07: げて一一に會通をまうけ。御遺誓の安心起行并に鎭
J09_0014A08: 西相承の正義に。信心を决定せしむべし。いたく背
J09_0014A09: 宗の邪義を難ずるに及ざる。これ此重の意なり。
J09_0014A10: 右五重の中に。尋常の勸化には。初重の意を急要と
J09_0014A11: すべし。されば古今一枚起請の註鈔あまた侍れども。
J09_0014A12: みな初重の意を。とかく釋せられたりと見えたり。
J09_0014A13: 老愚もしばしば御遺誓を講談せしかども。ただ初重
J09_0014A14: の意を縱橫に勸化して。ついに第二重以後をば沙汰
J09_0014A15: せざりき。その初重を急要とせし故は。世間の男女
J09_0014A16: おほくは念佛の行者なり。しかはあれど。世の末の
J09_0014A17: 習はしとして。安心を僻さまに心え。起行を懈りが
J09_0014B18: ちにのみ明し暮して。百即百生の行者なりと思て。
J09_0014B19: 長閑に過ぐる所に。思ひかけず病の床に臥すより。ひ
J09_0014B20: たすら死を恐れ命を惜みて。一大事を忘るる人も世
J09_0014B21: に多し。或は大事を忘れざるも。年ごろ起行の勤すく
J09_0014B22: なく。惡業のみ積れる事などを。にはかに思ひなげ
J09_0014B23: き悔ひ悲みて。决定往生の信心も立がたく。見ゆる
J09_0014B24: 人もまた多し。これみな平生の安心起行正しからざ
J09_0014B25: りし咎なり。されば。習ひ先より在らずは。懷念なん
J09_0014B26: ぞ辨ずべけんやとは云へり。これによりて。ねんご
J09_0014B27: ろに安心を勸めて。决定の正見を起さしめ。急に起
J09_0014B28: 行を勸めて。畢命爲期の日課の稱名を誓はしめて。
J09_0014B29: 正見正行の念佛の行者となすこと。今日勸化の極要
J09_0014B30: なりと思ひ侍る故に。初重の意を肝要とは勸けるな
J09_0014B31: り。扨第二重より以後を。ついに沙汰せざりし故は。
J09_0014B32: 聽聞の男女に益少なく。かへりて自損損他の失ある
J09_0014B33: べしと思ひ侍るゆへなり。自損とは何ぞや。他宗背宗
J09_0014B34: の人を評論するが故なり。經に云く一念人を輕しむ

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