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願戻し

提供: 新纂浄土宗大辞典

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がんもどし/願戻し

死者が生前神仏に対して行った願掛けを撤回し、願を掛ける前の状態に戻すことを目的にして行われる習俗。願開きともいう。扇の要を外して屋根の上に投げる、死者の着物の一部分を裂いて逆さにして振る、米を撒くなどの呪法を行う。これらは血縁関係のない他人の手によって行われることが多い。死者の生前の願を他人が代わって叶える、あるいは願が成就したことにしてお礼参りをすることは「願はたし」と呼び区別される。願戻しの主眼は神との絶縁であり、実際には生前の願掛けの有無にかかわらずすべての死者に対して行われることが多い。これは死後仏の浄土往生するにあたり、神との契約をすべて解消しておく必要があるとされたためである。したがって、在来信仰と死者の位置づけを異にする仏教の伝播を受けて発生した習俗であると考えられる。


【参考】柳田国男「先祖の話」(『柳田国男全集』一五、筑摩書房、一九九八)、井之口章次『日本の葬式』(筑摩書房、二〇〇二)


【参照項目】➡願掛け


【執筆者:春近敬】