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阿閦仏

提供: 新纂浄土宗大辞典

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あしゅくぶつ/阿閦仏

東方妙喜世界に住する現在仏。ⓈAkṣobhya-buddhaⓉsangs rgyas mi ’khrugs pa。音写に阿閦、阿閦鞞、阿閦婆、阿芻鞞耶、噁乞蒭毘也、意訳に不動、無動、無怒、瞋恚むしんにがある。『阿閦仏国経』上にその本生成道、今現在の説法について説かれる。それによると、過去に東方千仏刹のところにある阿比羅提という世界で、大目如来菩薩のために六度無極の行を説いた時、一人の比丘が無上正真道意を発し、瞋恚と愛欲を断じて、最正覚を成じようと誓った。この無瞋恚の願により会座菩薩から阿閦と呼ばれた。後に東方阿比羅提世界成仏して今現に説法するという(正蔵一一・七五一下〜二上)。ほぼ同内容の説示が『道行般若経』怛竭優婆夷品等の〈般若経〉にも見られ般若経典との親近性がうかがわれるものの、同じく初期大乗で登場した有力な現在他方仏である阿弥陀仏が〈般若経〉では言及されないことから、阿閦仏阿弥陀仏信仰は異なるところで起こったことが推測される。『法華経』化城喩品には、過去の大通智勝如来の十六王子の一人が阿閦仏として東方で成仏し、一人が阿弥陀仏として西方成仏したことを説き、『阿弥陀経』では東方の諸仏の一人として阿閦鞞仏を挙げる。また『悲華経』では、阿弥陀仏本生である無諍念王むじょうねんおうの第九王子が現在の阿閦で、東方において成仏国土を妙楽と号すると説き、『金光明経』冒頭に挙げる四方四仏では東方に阿閦、西方無量寿が置かれる。このように阿閦仏は東方に住する仏として定位置を占めるようになり、密教では金剛界五仏の一仏として東方に住して五智のうちの大円鏡智を表すに至る。この他『維摩詰所説経』見阿閦仏品では維摩居士阿閦仏の阿維羅提世界の人であったと説く。


【執筆者:齊藤舜健】