臨済宗のソースを表示

=りんざいしゅう／臨済宗=
中国[[禅宗]]五家七宗の一つ、日本禅の三宗の一派。中国[[臨済宗]]は、六祖慧能の禅脈を継いだ臨済<ruby>義玄<rt>ぎげん</rt></ruby>（—八六六）が、唐末頃に鎮州（河北省石家荘市正定県）の臨済院で開いた。「無位の真人」こそ真実の仏であると説き、簡要直接な語をもって機鋒を示すのがその禅風である。宋代に入ると、<ruby>慈明楚円<rt>じめいそえん</rt></ruby>（九八六—一〇三九）が現れ、その門下からは<ruby>黄龍慧南<rt>おうりゅうえなん</rt></ruby>（一〇〇二—一〇六九）と<ruby>楊岐方会<rt>ようぎほうえ</rt></ruby>（九九二—一〇四九）が現れ、慧南は南昌（江西省修水県）の黄龍寺、方会は<ruby>筠州<rt>いんしゅう</rt></ruby>（江西省<ruby>萍郷<rt>へいきょう</rt></ruby>市）の楊岐寺で活躍し、黄龍派と楊岐派の二派を形成した。臨済・<ruby>潙仰<rt>いぎょう</rt></ruby>・<ruby>曹洞<rt>そうとう</rt></ruby>・<ruby>雲門<rt>うんもん</rt></ruby>・<ruby>[[法眼]]<rt>ほうげん</rt></ruby>の五家にこの二派を加えて、中国[[禅宗]]の五家七宗という。その後、[[臨済宗]]楊岐派の<ruby>[[大慧]]宗杲<rt>だいえそうこう</rt></ruby>（一〇八九—一一六三）は従来の[[公案]]禅を集大成した。この[[公案]]禅は曹洞系の黙照禅とともに宋代の禅思想を代表する二つの流れとなった。鎌倉時代に入宋した[[栄西]]は、[[臨済宗]]をはじめて日本に伝えた。室町時代を経て、おおよそ二四の中国禅の法脈が日本に伝えられた。<ruby>釈半人子<rt>しゃくはんにんす</rt></ruby>の『二十四流[[宗源]]図記』によれば、[[臨済宗]]に属する法脈は二一であり、そのうち、[[栄西]]の黄龍派を除いてすべて楊岐派の流れである。これらの[[臨済宗]]の禅僧は、鎌倉五山と京都五山を中心に禅法を広め、中世の日本の社会や文化の発展に大きく寄与した。日本に伝えられた二一流の臨済法脈のうち、今日なお[[法灯]]を続けているのは江戸時代に<ruby>白隠慧鶴<rt>はくいんえかく</rt></ruby>（一六八五—一七六八）によって再興した<ruby>大応<rt>だいおう</rt></ruby>派のみである。現在の[[臨済宗]]は、臨済義玄を[[宗祖]]とし、一四の派別に分かれており、各派の[[本山]]は<ruby>南禅寺<rt>なんぜんじ</rt></ruby>、<ruby>相国寺<rt>しょうこくじ</rt></ruby>、<ruby>妙心寺<rt>みょうしんじ</rt></ruby>、<ruby>建仁寺<rt>けんにんじ</rt></ruby>、<ruby>[[大徳寺]]<rt>だいとくじ</rt></ruby>、<ruby>天龍寺<rt>てんりゅうじ</rt></ruby>、<ruby>東福寺<rt>とうふくじ</rt></ruby>、<ruby>建長寺<rt>けんちょうじ</rt></ruby>、<ruby>円覚寺<rt>えんがくじ</rt></ruby>、<ruby>方広寺<rt>ほうこうじ</rt></ruby>、<ruby>永源寺<rt>えいげんじ</rt></ruby>、<ruby>向嶽寺<rt>こうがくじ</rt></ruby>、<ruby>仏通寺<rt>ぶっつうじ</rt></ruby>、<ruby>国泰寺<rt>こくたいじ</rt></ruby>である。[[臨済宗]]全体としては[[総本山]]がなく、これら一四派の総称が[[臨済宗]]であり、各派の協議機関として[[臨済宗]]・<ruby>黄檗<rt>おうばく</rt></ruby>宗連合各派合議所（臨黄合議所）が設立されている。[[臨済宗]]の<ruby>[[西芳寺]]<rt>さいほうじ</rt></ruby>（<ruby>苔寺<rt>こけでら</rt></ruby>、現在は単立）・天龍寺・<ruby>鹿苑寺<rt>ろくおんじ</rt></ruby>（<ruby>金閣寺<rt>きんかくじ</rt></ruby>）・<ruby>[[慈照寺]]<rt>じしょうじ</rt></ruby>（<ruby>銀閣寺<rt>ぎんかくじ</rt></ruby>）・<ruby>龍安寺<rt>りょうあんじ</rt></ruby>はユネスコに登録された[[世界]]文化遺産としても有名である。
----
【参考】玉村竹二『臨済宗史』（春秋社、一九九一）、同『日本禅宗史論集』上・下之一・下之二（思文閣、一九七六・一九七九・一九八一）
----
【執筆者：林鳴宇】