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祐天大僧正利益記

提供: 新纂浄土宗大辞典

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ゆうてんだいそうじょうりやくき/祐天大僧正利益記

三巻。織田丹後守の家臣寺田市右衛門が見聞・筆記したものを、祐天寺二世祐海が写し六世祐全が記事を追補しまとめた版本。文化五年(一八〇八)刊。祐天とその書写した名号にまつわる利益の実話集。上巻一三条・中巻二一条・下巻一七条を収載。利益の内容は、死霊得脱、水難・火難・刀難を免れる話、出産にまつわる話など、念仏信仰の大切さを説く。現世利益的な話には編者が適宜評を付し解説を加える。祐天を題材とした小説・歌舞伎が流行する中、祐天寺として祐天の事績を明らかにし、世間の人に念仏信仰への関心を持たせようとした。当時、東漸寺住職の宣契が記した「凡例七箇条」には、本書に現益の記載が多いのは寺田氏の視点で書かれているからであり、それは仏から与えられた利益である、と祐天の本意を汲むべきであることが述べられている。


【所収】『祐天寺史資料集』三(祐天寺、二〇〇六)


【執筆者:巖谷勝正】