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現世

提供: 新纂浄土宗大辞典

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げんぜ/現世

現在の時間で、物事が存続する一瞬(一刹那)を意味する。また現在の世の中、この世のこと。Ⓢpratyutpannaの訳語としても用いられる。アビダルマでは、現象をその構成要素であるダルマに還元して考察するが、そのダルマは三世に分類される。すなわちダルマが、生じていない状態を未来世、まさに生じている状態を現在世(現世)、生じ終わって滅した状態を過去世といい、ダルマは現在世に一瞬とどまり作用をなして、次の瞬間には過去世に滅していく。このような思想は刹那滅とよばれ、これによると現世とは一瞬一瞬の積み重ねである。また今生を意味する現世は中際ともいわれ、後際(来世)・前際(前世)と共に三際といわれる。この三際は輪廻説と深く結びつき、前世は因として現世に果を残し、現世もまた因となり来世に果を残すとされる。このように現世の行為が来世に影響を与えるという考えの他に、現世の行為がそのまま現世において影響を与えるという考えもあり、特にこれが利益になることを現世利益という。


【参照項目】➡現世利益


【執筆者:石田一裕】