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浄土教概論

提供: 新纂浄土宗大辞典

じょうどきょうがいろん/浄土教概論

望月信亨著。昭和一五年(一九四〇)一〇月、弘文堂書房刊。著者の浄土教研究を集大成した性格を有する書。経典論については経典そのものと経典目録の精査を通じて大乗経典の成立史的変遷の中で、浄土経典がどのような過程のもと成立したかを論述している。またインド・中国・日本の浄土教に関しては、仏身論仏土論と実践論を複合視した視点から整理を進め、的確な歴史認識を前提とした教理体系の叙述を行っている。また本書は帰結で「法然一枚起請文に一代の法をよくよく学すとも、一文不知の愚鈍の身になして、智者の振舞をせずして唯一向念仏すべしと言っているが、浅墓な思索分別を捨てて一文不知の愚鈍の身に還り、全生命を絶対者の前に捧ぐる時、そこに彼岸世界が展開することを示したのである」と説示している。この一文には偉大なる宗学者であるとともに宗教者でもあった著者の内面が如実に語られているものと考えられる。昭和五五年一〇月、東洋文化出版より再刊。


【執筆者:柴田泰山】