操作

没後遺誡文

提供: 新纂浄土宗大辞典

2018年3月30日 (金) 06:35時点における192.168.11.48 (トーク)による版
(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)

もつごゆいかいもん/没後遺誡文

法然(六六歳)が建久九年(一一九八)四月八日付で弟子たちに言い置いた遺言状。『起請没後二箇条事』ともいう。恵空本『漢語灯録』一〇では「送山門起請文」「七箇条起請文」と共に「没後起請文」と題するが、内容からは正徳版『漢語灯録』で題するように「没後遺誡文」とした方が適当である。内容は「葬家追善事」と題する、法然没後に弟子たちが取るべき行動を示したものと「不可諍論房舎・資具・衣鉢・遺物等事」と題した、遺産分与に関する二箇条から成る。第一条では、一所に集会・群居することや図仏・写経・浴室・檀施等の余行による法然追善を禁止し、もし報恩の志がある者はただ一向念仏を修するように勧める。第二条では入室の弟子七名(信空感西証空円親長尊感聖良清)を挙げ、房舎等の遺産を分配・付属する(『西方指南抄』所収本では第二箇条を欠く)。法然は前年に瘧病おこりやまいを患い一時危険な状態にあった(『四十八巻伝』一一、『醍醐本』「三昧発得記」等)。こうした状況下、九条兼実の請により『選択集』を執筆し、『没後遺誡文』は翌月に作成していることになる。法然の死の覚悟や、当時の教団の状況を窺い知ることのできる貴重な資料である。


【所収】昭法全、浄土宗総合研究所編『黒谷上人語灯録写本集成』一(思文閣出版、二〇一一)


【参考】中野正明『増補改訂 法然遺文の基礎的研究』(法蔵館、二〇一〇)


【執筆者:南宏信】