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=ぼんにゅうほうど／凡入報土=
[[凡夫]]が[[報土]]（[[阿弥陀仏]]の[[極楽浄土]]）に[[往生]]すること。『[[浄土立宗の御詞]]』において[[法然]]は「我、[[浄土宗]]を立つる心は、[[凡夫]]の[[報土]]に生まるることを、示さむためなり。もし、天台によれば、[[凡夫]][[浄土]]に生まるることを許すに似たれども、[[浄土]]を判ずること浅し。もし、法相によれば、[[浄土]]を判ずること深しといえども、[[凡夫]]の[[往生]]を許さず。諸宗の所談、異なりといえども、凡て[[凡夫]][[報土]]に生まるることを許さざる故に、[[善導]]の釈義によりて、[[浄土宗]]を立つる時、すなわち、[[凡夫]][[報土]]に生まるること現わるるなり」（聖典六・六五／昭法全四八一）と述べ、[[浄土]]立宗の意図が[[凡入報土]]を開示することにあり、同時に[[善導]]の所説に基づいて[[浄土]]立宗をしなければ[[凡入報土]]が明らかになることはないという。すなわち[[天台宗]]の[[教義]]によれば、[[凡夫]]の[[往生]]が叶う[[阿弥陀仏]]の[[極楽浄土]]は[[劣応身]]を教主とする<ruby>[[凡聖同居土]]<rt>ぼんしょうどうごど</rt></ruby>という最も低次な[[浄土]]に過ぎないと捉えられ、[[法相宗]]の[[教義]]によれば、[[阿弥陀仏]]が建立した[[極楽浄土]]は高次な[[報土]]（<ruby>他[[受用土]]<rt>たじゅゆうど</rt></ruby>）に位置づけられてはいるものの[[凡夫]]の[[往生]]は叶わないと捉えられている。このように[[聖道]]門の立場に留まっていたのでは、どこまでも[[凡入報土]]が叶うことはない。それに対して[[善導]]は「もし[[衆生]]の垢障を論ぜば、実に<ruby>欣趣<rt>ごんしゅ</rt></ruby>し難し。正しく仏願に託して、以て<ruby>強縁<rt>ごうえん</rt></ruby>と<ruby>作<rt>す</rt></ruby>るに由って、五乗をして<ruby>斉<rt>ひと</rt></ruby>しく入らしむることを致す」（『[[観経疏]]』聖典二・一八五～六／[http://jodoshuzensho.jp/jozensearch_post/search/detail.php?lineno=J02_0012 浄全二・一二上]）と[[阿弥陀仏]]の[[本願力]]に乗ずれば[[罪悪生死の凡夫]]でも[[報土往生]]が叶うと主張した。[[法然]]はこうした[[善導]]の理解を前面に押し出して[[凡入報土]]を[[浄土宗]]義の根幹に据え、その[[教義]]を確立した。それによって[[法然]]は、[[凡夫]]の視点に立つ[[機辺]]の立場から[[阿弥陀仏]]の視点に立つ仏辺の立場へと[[仏教]]の構造を大きく転換し、ここにすべての人間が[[平等]]に救われる[[仏教]]を探し求めた[[法然]]の願いが結実することとなったのである。
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【資料】『浄土頌義探玄鈔』、『翼賛』六
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【参考】林田康順「法然上人『浄土立宗の御詞』について—〈平行線の教え〉から〈たすきがけの教え〉へ—」（『三康文化研究所年報』三六、二〇〇五）
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【参照項目】➡[[凡夫]]、[[報土]]
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【執筆者：林田康順】