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=さんじん／三身=
仏の身体を三種に分類して説明したもの。<ruby>[[法身]]<rt>ほっしん</rt></ruby>・<ruby>[[報身]]<rt>ほうしん</rt></ruby>・<ruby>[[応身]]<rt>おうじん</rt></ruby>の三つをいう。[[法身]]（Ⓢdharma-kāya）とは、永遠不変にして色も形も有さない真理・[[真如]]そのもののことである。[[報身]]（Ⓢsaṃbhoga-kāya）とは、[[本願]]を建立し[[修行]]によってそれを成就した仏のことである。[[応身]]（Ⓢnirmāṇa-kāya）とは、[[衆生]][[済度]]のために機に応じて現れる仏のことである。<ruby>[[瑜伽]]<rt>ゆが</rt></ruby>行[[唯識]]学派では、それぞれ<ruby>[[自性身]]<rt>じしょうしん</rt></ruby>・<ruby>[[受用身]]<rt>じゅゆうしん</rt></ruby>・<ruby>[[変化身]]<rt>へんげしん</rt></ruby>という。[[釈尊]]の在世当時、[[弟子]]達にとっては人格を有した<ruby>[[生身]]<rt>しょうじん</rt></ruby>の[[釈尊]]こそが拠り所であった。それ故、[[釈尊]]の[[入滅]]は[[弟子]]達にとって大きな衝撃であり、拠り所を模索する必要があった。そこで[[弟子]]達は、[[釈尊]]の説いた法を拠り所とし、[[入滅]]しても法は永遠不変であると考えた。さらに[[釈尊]]は法を悟って仏になったのであって、仏とは永遠不滅の真理を本質とするものであり、普遍なる真理（＝法）そのものが[[釈尊]]の本質であると考えられるようになった。こうして「[[法身]]」という概念が成立した。その[[法身]]に対して、[[入滅]]した[[釈尊]]の[[生身]]は「<ruby>[[色身]]<rt>しきしん</rt></ruby>（Ⓢrūpa-kāya）」と称された。[[色身]]とは、人間の肉体を持った仏身のことである。このようにして、「[[法身]]」と「[[色身]]（[[応身]]）」という<ruby>[[二身]]<rt>にしん</rt></ruby>論が成立したと考えられる。一方、[[報身]]は大乗の[[菩薩]]思想の発達と密接な関係にある仏身である。[[菩薩]]は[[衆生]][[済度]]のために[[本願]]を建て、その後はかり知れない年月を[[修行]]し仏となるのであるが、その<ruby>報<rt>むく</rt></ruby>いとして成就された仏身を[[報身]]と称する。[[本生譚]]等に基づきながら、それらによって生じた絶対的な人格身である[[釈尊]]は、[[三身]]論における[[報身]]の思想と共通する所がある。[[法身]]は、人格性を有さず不可知・不可視であるのに対し、[[報身]]および[[応身]]は人格性を有する可知的・可視的な仏身である。また、[[法身]]および[[報身]]は普遍にして不変であるのに対し、[[応身]]は限定的な仏身であり、その意味において[[報身]]は、[[法身]]と[[応身]]の性格を合わせ持つ仏身ということができる。したがって、[[法身]]は<ruby>無始無終<rt>むしむしゅう</rt></ruby>、[[報身]]は<ruby>有始無終<rt>うしむしゅう</rt></ruby>、[[応身]]は<ruby>有始有終<rt>うしうしゅう</rt></ruby>である。

[[浄土宗]]における[[三身]]論には、[[阿弥陀仏]]の仏格を表す[[報身]]論（[[三身]]別体論）と仏の証果を表す[[三身即一]]論（[[三身]]同体論）がある。[[法然]]は『[[無量寿経釈]]』において[[報身]]とは、「前因に報いて感得する所の身なり。…およそ万行の因に答えて万徳の果を感ずること、依因感果、華の果を結ぶが如し。業に<ruby>酬<rt>むく</rt></ruby>いて報を招く、響の声に随うに似たり。これすなわち法蔵[[比丘]]実修の万行に酬いて、[[弥陀]][[如来]]実証の万徳を得たまえる[[報身]][[如来]]なり」（昭法全七八～九）と述べ、[[阿弥陀仏]]が[[報身]]であることを明らかにしている。[[法然]]は[[報身]]について「依因感果」「酬業招報」という語で説明しているが、これらはいずれも[[願行]]を成就した仏であることを意味している。[[阿弥陀仏]]の仏格を[[報身]]と定義することは、[[道綽]]『[[安楽集]]』上の「現在の[[弥陀]]はこれ報仏、[[極楽]]宝[[荘厳]]国はこれ[[報土]]なり」（[http://jodoshuzensho.jp/jozensearch_post/search/detail.php?lineno=J01_0676 浄全一・六七六上〜下]）という一節や、[[善導]]『[[観経疏]]』玄義分の「これ報にして化に非ず。云何が知ることを得たる。大乗同性経に説くがごとし、[[西方]][[阿弥陀仏]]は、これ報仏[[報土]]なりと。また[[無量寿経]]に云く、法蔵[[比丘]]、<ruby>世饒<rt>せにょう</rt></ruby>王仏の<ruby>所<rt>みもと</rt></ruby>に在って、[[菩薩]]の道を行じたまいし時、[[四十八願]]を発し、一一に願じて言く、もし我れ仏を得たらんに、[[十方]]の[[衆生]]、我が[[名号]]を称して我が国に生ぜんと願じて、<ruby>下<rt>しも</rt></ruby>[[十念]]に至るまで、もし生ぜずんば[[正覚]]を取らじと。今すでに[[成仏]]したまう、すなわちこれ<ruby>酬因<rt>しゅういん</rt></ruby>の身なり」（聖典二・一八二～三／[http://jodoshuzensho.jp/jozensearch_post/search/detail.php?lineno=J02_0010 浄全二・一〇下]）等の説示に基づくものである。さらに[[法然]]は『[[逆修説法]]』<ruby>四七<rt>ししち</rt></ruby>日において「仏に惣別の二[[功徳]]まします。先ず惣とは[[四智]][[三身]]等の[[功徳]]なり。一切諸仏は内証等しく具して一仏も異なりなき故に、諸経の中に仏の[[功徳]]を説くに、惣じて内証の[[功徳]]をば説かず。ただ別して<ruby>外用<rt>げゆう</rt></ruby>の[[功徳]]を説くなり」（昭法全二五五）と述べ、総—内証—諸仏[[平等]]、別—外用—仏の個別的作用とし、内証に[[三身]]を[[具足]]するとしている。また『[[選択集]]』三では[[勝劣の義]]を説く中で「初めに勝劣とは[[念仏]]はこれ勝、余行はこれ劣なり。<ruby>所以<rt>ゆえん</rt></ruby>は何となれば、[[名号]]はこれ万徳の帰する所なり。然ればすなわち[[弥陀]]一仏の<ruby>所有<rt>あらゆ</rt></ruby>る[[四智]]・[[三身]]・[[十力]]・[[四無畏]]等の一切の内証の[[功徳]]、[[相好]]・[[光明]]・[[説法]]・利生等の一切の外用の[[功徳]]、皆ことごとく[[阿弥陀仏]]の[[名号]]の中に<ruby>摂在<rt>しょうざい</rt></ruby>せり。故に[[名号]]の[[功徳]]最も勝とす。余行は然らず、<ruby>各<rt>おのおの</rt></ruby>一隅を守る。これを以て劣となす」（聖典三・一一八／昭法全三一九）と説き、[[三身]]を内証の[[功徳]]としている。すなわち「[[阿弥陀仏]]は[[報身]]であり、内証に[[三身]]を[[具足]]する」というのが、[[法然]]の捉え方である。これは[[善導]]『[[往生礼讃]]』の「一切の諸仏は[[三身]]同じく証し、悲智、果<ruby>円<rt>まど</rt></ruby>かに、また応に無二なるべし」（[http://jodoshuzensho.jp/jozensearch_post/search/detail.php?lineno=J04_0356 浄全四・三五六下]）を継承したものである。

[[良忠]]は、『[[法事讃私記]]』上において「諸仏[[如来]]みな[[三身]]を具す、[[三身]][[三土]]に居す、中において自性自受の[[二身]]は利生の義なきが故に、以て群生を導くとは他受用と[[変化身]]との徳に当たる。仏仏別なく等しく[[三身]]を具す。故に無殊と云う。所証[[平等]]なるが故にみな[[慈悲]][[方便]]あり」（[http://jodoshuzensho.jp/jozensearch_post/search/detail.php?lineno=J04_0040 浄全四・四〇上]）と述べ、諸仏が[[三身]][[三土]]を具すとし、[[受用身]]（[[報身]]）を<ruby>自[[受用身]]<rt>じじゅゆうしん</rt></ruby>と<ruby>[[他受用身]]<rt>たじゅゆうしん</rt></ruby>に分け、[[衆生]][[済度]]は[[他受用身]]と[[変化身]]によるとしている。これについて『[[伝通記]]』玄義分記では「問う、[[他受用身]]及び[[変化身]]に<ruby>俱<rt>とも</rt></ruby>に[[別願]]有り、たとい酬因の身なりと雖もいずくんぞ是れ[[報身]]と定判せん。答う、[[法身]]は<ruby>本有<rt>ほんぬ</rt></ruby>、[[化身]]は随縁、[[報身]]は即ちこれ上冥下契の修因感果をもってその体となす。…報化俱に願ありと云うと雖も、その願相に随いて、[[二身]]を分かつべし。今酬因の身と言うは[[六八の願]]に約す。然るに[[本願]]の中にすでに寿と光との[[無量]]の[[本願]]あり。定んで知りぬ、まったく[[報身]]につきて発す所の願なることを」（[http://jodoshuzensho.jp/jozensearch_post/search/detail.php?lineno=J02_0202 浄全二・二〇二下]）と述べ、[[阿弥陀仏]]は[[四十八願]]を成就し光寿[[無量]]であるから[[報身]]であるとしている。

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【参考】姉崎正治『現身仏と法身仏』（前川文栄閣、一九二五）、宇井伯寿『仏教思想の基礎』（東成出版社、一九六〇）、望月信亨『浄土教の起原及発達』（山喜房仏書林、一九八〇）、石井教道『浄土の教義と其教団』（宝文館、一九二九）、髙橋弘次『改版増補法然浄土教の諸問題』（山喜房仏書林、一九九四）、長尾雅人「仏身論をめぐりて」（『哲学研究』五二一、一九七一）、曽根宣雄「『逆修説法』四七日の三身論についての再検討」（正大紀要九六、二〇一〇）
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【参照項目】➡[[仏身論]]、[[仏土論]]、[[報身]]、[[法身]]、[[応身]]、[[化身]]、[[三身礼]]
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【執筆者：曽根宣雄】