酤酒戒
提供: 新纂浄土宗大辞典
こしゅかい/酤酒戒
酒の売買を禁じた戒。十重禁戒の第五番目の戒であり、菩薩の波羅夷罪である。不酤酒罪縁戒ともいう。酒の売買を誰かに教えて、させることも禁止されている。酤酒は酒の売買を意味する語であり、また『瑜伽論』声聞地ではⓈpānāgāraの訳語として用いられている。菩薩に対して酒の販売を禁じ、また菩薩が他の人に対して酒の販売を勧めることを禁じるのは、酒が罪の原因を作るものだからと考えられている。すなわち、菩薩は人々に対して智慧を生じさせる存在であるのに、それに反して自身で酒を売り、また他の人にそれを売らせることは、人々の心を迷わせることにつながるゆえに波羅夷罪とされるのである。
【資料】『梵網経』、『菩薩戒義疏』
【執筆者:石田一裕】