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湯灌

提供: 新纂浄土宗大辞典

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ゆかん/湯灌

遺体を棺に納める前に、湯水で浄めること。古くからの葬送習俗として、湯灌に用いる湯水を汲む際には、水汲みに行く者を後ろから呼び止める「声かけ水」、たらいにまず水を張ってから湯を足す「逆さ水」、左手で湯を掬う「左びしゃく」といった、日常とは逆の作法や、湯は臨時のかまどを作って沸かし、かまどは直ちに壊す、湯灌後の水は日陰や床の下に捨てるなど、葬式に限って行うしきたりが伝えられている。浄土宗作法としての決まりはないが、『臨終節要』(六五)や『諸回向宝鑑』(五・一四ウ)には「香湯を用いて沐浴し、新たな浄い衣服を着せる」と、湯灌の心得が示され、『啓蒙随録』には「死体の沐浴を、俗に湯灌という…これはなきがらに、灌頂水を授ける意味であろう」(初編一・一五オ)と記している。灌頂作法を行うときは、塗香を入れた香水を用意し、「弥陀心水沐身頂」と意念して、沐浴偈南無仏水 南無法水 南無僧水 南無観世音菩薩 南無勢至菩薩 清浄大海衆 南無阿弥陀仏」を唱えながら、香水をしきみの葉などで新亡の頭頂に三遍灌ぐ。


【資料】慈空『臨終節要』、『諸回向宝鑑』、『啓蒙随録』


【参考】須賀隆賢『引導下炬集』(昭和四〇年版)


【参照項目】➡葬儀式沐浴偈


【執筆者:熊井康雄】