「浄土初学抄」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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じょうどしょがくしょう/浄土初学抄
一巻。『浄土初学集』または単に『初学抄』ともいう。法然著。本書は最初に源信『往生要集』極楽証拠門の問答を挙げて、十方世界に浄土があるのになぜ西方極楽世界への往生のみ願うのかと問い、天台智顗の説として、諸経論には多く阿弥陀仏を念じて極楽往生することを勧めているからであると答え、智顗は一切経を一五回も読まれた人であるからこの説は信ずべきであるとする。次いで懐感および源信の説によると往生行に念仏往生と諸行往生の二種あることを挙げ、天台は五大部の章疏の他に『十疑論』を著して往生極楽の行は念仏門なりと釈しているため、天台宗の人が往生を願うには『十疑論』の念仏法門を学ぶべきであるとする。さらに基の『西方要決』も挙げ法相宗の人はこれによるべきであるとし、しかもこれは源信の『往生要集』の説であるとしている。続いて華厳、天台、三論、法相、地論、摂論、大乗律、真言、成実、俱舎、四分律の一一宗について各宗章疏名を挙げ、華厳について「文義広博なりと雖も往生極楽を演べず、然れば西方の指南に非ず」(昭法全八三四/浄全九・四四〇下)、三論について「往生極楽の義を宗とせず」(昭法全八三六/浄全九・四四一下)といい、また天台について「往生極楽の旨は別して観経疏、十疑等の中に在り」(昭法全八三五/浄全九・四四一上)、法相について「此の宗の極楽の道を知らんと欲せば法相宗の懐感法師の群疑論並びに慈恩大師の西方要決を学ぶべきなり」(昭法全八三七/浄全九・四四二下)等と各宗の要点を指摘して、往生極楽については述べていないので西方極楽往生の指南とはできないとする。また、真言宗の往生説については善導の説と対比して厳しく峻別し、高僧伝の十科中の習禅、明律二編の内容について深い考察を加えている。著作年次は不明であるが、内容的には法然の修学期の抄記を偲ばせる要素がある。
【所収】昭法全、浄全九、正蔵八三
【執筆者:金子寛哉】