顕浄土伝戒論
提供: 新纂浄土宗大辞典
けんじょうどでんかいろん/顕浄土伝戒論
一巻。聖冏撰。至徳四年(一三八七)成立。浄土宗における円頓戒の由来と意義を説いた書。聖冏の時代、浄土宗は他宗から寓宗、付庸宗と言われ、その独立性を否定されていた。本書の前半はこれに対し浄土宗に伝承された円頓戒が正統であることを主張する。円頓戒は南岳慧思から天台智顗に伝えられ比叡山に伝承されたが、叡空から法然に伝授されてから浄土宗の戒法となったことにより、本宗が正当な宗派であると論ずる。後半は同じ念仏諸宗において問題になっていた戒と称名念仏に関する記述である。正行としての念仏に対する円頓戒の影響を論述し、持戒が称名にとって障害にならないことを解明している。註釈書として『顕浄土伝戒論私記』『顕浄土伝戒論補註』(共に全長撰)がある。
【所収】浄全一五
【参考】宮林昭彦「聖冏撰『顕浄土伝戒論』について」(『阿川文正教授古稀記念論集 法然浄土教の思想と伝歴』山喜房仏書林、二〇〇一)
【参照項目】➡円頓戒
【執筆者:服部淳一】