選択密要決
提供: 新纂浄土宗大辞典
せんちゃくみつようけつ/選択密要決
五巻。証空著と伝えられるが疑わしい。成立年代不明。本書は事相鈔の一つであり、『選択集』に対して定散・念仏・来迎や慈悲・智慧の名目(術語)をもって注釈したもの。証空は『選択集』の撰述の場において勘文の役と第一三から第一六章段の執筆をしているにもかかわらず、この点等について述べていないことも疑問である。『選択集』についての秘事口伝を記す書物であることから「密要決」と題されている。まず題号は来迎、「南無阿弥陀仏」は念仏、「往生之業念仏為先」は定散である。全一六章段は『観経』正宗分一六観に相当する。第一・二章段は仮観であり、第三から第六章段の依報は『無量寿経』の唯智慧に相当し定散の機である。第七から第一二章段の正報は『観経』の慈悲・智慧に相当し念仏である。第一三から第一六章段は『阿弥陀経』の唯慈悲に相当し来迎であると述べる。『選択集』は「広説衆譬」を明かし、仏と衆生、念仏と来迎は不離の関係とする。
【所収】浄全八、西全二
【参考】石黒観道「曼陀羅註記外六部解題」(西全二、一九七三)
【執筆者:中西随功】