本願力は、はかりしれない力が秘められたものであり、浄土往生のための手立てであるとされる。すなわち凡夫のままで阿弥陀仏の報土である極楽浄土に往生することができるのは本願力によるものであるから、本願力の妙なる力を浄土の秘術という。良栄理本『法事讃私記見聞』下には「浄土秘術を知りて、他力の直道に入るの人は利根なり、上機なり。余門出離自力迂回うえ道に趣くの人は鈍根なり、下機なり」(浄全四・一三六上)と述べて、機根の利鈍を分別している。
【執筆者:沼倉雄人】