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印壊文成

提供: 新纂浄土宗大辞典

いんねもんじょう/印壊文成

曇無讖どんむしん訳『大般涅槃経』二九や『大智度論』一二では、死からまた次の生へと相続する中で、中有(中陰)の存在の比喩として説明される。蠟印ろういんを泥に押し当てると、印は壊れても泥には文字や模様が現れるが、もとの蠟印は泥でもなく、泥も蠟印から生じたのでもない。そのように本有の五陰が変化して中有の五蘊になったのではなく、また中有の五蘊がおのずから生じたのでもなく、他所からきたわけでもない。泥の文字も中有の五蘊も、みな因縁によって現れるということで、すべては無我でありながらも輪廻は相続されていくのである。この比喩は曇鸞略論安楽浄土義』、道綽安楽集』、善導観経疏』においても用いられている。ただしそれらにおいては輪廻の比喩としてではなく、穢土往生行を修めた者が、その因行に報われて浄土往生することの比喩として説かれている。


【執筆者:齊藤隆信】