三部経私記
提供: 新纂浄土宗大辞典
さんぶきょうしき/三部経私記
文治六年(一一九〇)に重源の要請により法然が東大寺において「浄土三部経」を講説したときの記録とされるもの。『無量寿経釈』『観無量寿経釈』『阿弥陀経釈』それぞれ独立したもので、この三部をあわせて「三部経私記」あるいは「三部経釈」という。「三部経私記」の名は、『古本漢語灯録』一の『無量寿経釈』の末尾に「私に云く、右一巻は、印板流布す。故に今略して之を写さず。彼の印本は外題に三部経私記、内題には釈と云う。即ち今の本なり」とあり、このことから、それぞれの釈がすでに独立して刊行されていて、たとえば、寛永九年(一六三二)に開版された「三部経釈」は外題には「無量寿経 私記」とあり、承応三年(一六五四)版にも「浄土三部経私記 無量寿経」などとあることから「三部経私記」「私記」の名で用いられていたことが推測される。
【参考】石井教道『選択集の研究(総論篇)』(『現代仏教名著全集』六、隆文館、一九六五)、中野正明『増補改訂法然遺文の基礎的研究』(法蔵館、二〇一〇)
【執筆者:新井俊定】