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カルト

提供: 新纂浄土宗大辞典

カルト/cult

崇拝、礼拝を意味するラテン語cultusから派生した語。もともとは儀礼や儀式、祭祀といった一般的な宗教活動を指す語であった。しかし現代では反社会的な宗教および宗教団体を指す語として使用されることが多い。M・ウェーバーやE・トレルチなどは、ある社会内の主流な宗教に対し、そこから分派・独立した宗教運動や集団をカルトと区分した。したがって原理的には、カルトが大きな集団となり社会内での認知を得るようになるとカルトではなくなる。つまり、カルトとは各々の社会や時代が有する主流文化によって規定される流動的な概念といえる。たとえば、仏教などの東洋思想を取り入れて形成された集団が欧米ではカルトとして認知されている事例が多々ある。近年、日本では「カルト=社会問題を起こす集団」として報道されることが多いが、批判し否定するだけではカルトの多様性に対応することは難しい。したがって、カルトを固定的に捉えるのではなく、自らが接した事例や事実を正確に把握した上で的確に対処することが求められている。


【参考】桜井義秀『「カルト」を問い直す—信教の自由というリスク』(中央公論新社、二〇〇六)、星野英紀他編『宗教学事典』(丸善、二〇一〇)


【執筆者:江島尚俊】