浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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Z08_0341A01: | 空花和歌集竝序 |
Z08_0341A02: | やまと歌は。人のこゝろをたねとして。咲きにほふ詞 |
Z08_0341A03: | の花なれば。その風體。その人に似るべし。爰にわが法 |
Z08_0341A04: | 然上人は。往きやすき御法の門を。ひらき給ふのみに |
Z08_0341A05: | あらず。至りがたき風雅の境にも立入せ給へり。つら |
Z08_0341A06: | つらその詠歌を見るに。いとよく上人に似たり。實相 |
Z08_0341A07: | そなはりて。をのづから世の敎誡となり。人をして幽 |
Z08_0341A08: | 玄ならしむる德あり。繪詞傳語燈錄に載するところ。 |
Z08_0341A09: | すべて十九首。此抄に注す。いはゆる崐山の片玉にし |
Z08_0341A10: | て行者の至寶なり。思ふに御一生の詞花。あにこれの |
Z08_0341A11: | みならんや。あたらしきかな。詠草の傳はらざる事。誠 |
Z08_0341A12: | や上人は。月輪殿の御歸依ふか〻りしかば。慈鎭和尙。 |
Z08_0341A13: | 後京極殿など聞ゆる。やんごとなき。歌の仙達に。年來 |
Z08_0341A14: | なれしたしみて。歌の道もこそ。論じ給ふべければ。 |
Z08_0341A15: | その詠のめでたきはことはりぞかし。されば。代々の |
Z08_0341A16: | 勅撰にもあまた入て侍る。しかるに近來。さすがにひ |
Z08_0341A17: | ろき歌の書の。片端をもよまずして。あやめもしら |
Z08_0341A18: | ぬ。あやしのともがら。たやすく上人の歌を議す。こ |
Z08_0341A19: | れはなはだ。をこなる事なり。たとへば。みじかきつ |
Z08_0341B01: | るべの。ふかき井にをよばず。池の蛙の。わたつ海を |
Z08_0341B02: | しらざるがごとし。あはれむべし。はぢつべし。野僧。 |
Z08_0341B03: | かたじけなく。吉水の流をむすぶといへども。法門の |
Z08_0341B04: | ことはりをたに。くはしくはさとらず。まして歌の心 |
Z08_0341B05: | は。富の小川の。ふかきあさきをもはからず。難波津の |
Z08_0341B06: | よしあしをも。わきまへぬ身ながら。よのみだりな |
Z08_0341B07: | る沙汰を聞くにたへず。なまじゐにこれを注せり。あ |
Z08_0341B08: | さく見。すくなくおけるあざけりは。のがるべきにあ |
Z08_0341B09: | らねども。いかで。こ〻ろの底のあまりある情をあら |
Z08_0341B10: | はし。言のすゑのわたくしなき例をもしるさばやと |
Z08_0341B11: | おもふがゆへなり。亦ねがはくは。此和歌をひろく世 |
Z08_0341B12: | に傳へて惡をこらし。善をす〻むる媒とし。世をい |
Z08_0341B13: | とひ佛を念ずるしるべとなして。石木ならぬ諸人の |
Z08_0341B14: | 心に。ふかきめぐみをも。いさ〻か思ひしらしめんと |
Z08_0341B15: | て。黑谷の落葉かきあつめつ〻。空花和歌集と名づけ |
Z08_0341B16: | 侍る。あやまりて識者の一覽にをよば▲。た▲報恩の |
Z08_0341B17: | こ〻ろざしをたすけて。潛踰の罪をゆるし給ひてよ。 |
Z08_0341B18: | 時に元祿六とせの春難波津の新別所にしてしるし |
Z08_0341B19: | 侍る |
Z08_0341B20: | 洛北報恩寺隱居 湛澄 |