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J2620 以八上人行状記 素信 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0769A01: かに是をしれり。なんぞ發露して佛前に懺悔せざる
J17_0769A02: やとて。夜前見し體をくはしく語りたまひぬ。とき
J17_0769A03: に彼僧おどろき泣ていはくわれあやまれりあやまれり山寺
J17_0769A04: のありさま。常に朝三暮四資縁にとぼしければ。此
J17_0769A05: 事を聞やいなや。耻しながら思念することかくのごと
J17_0769A06: し。其あさま敷欲心。はしり行て其かたちをなすに
J17_0769A07: やあらん。呼かなしひかな。かかる心にては來世の
J17_0769A08: 苦報はかりがたし。今おもはずも尊師にあひ奉りて
J17_0769A09: 我罪業をあらはせること。よくおもへば我爲の善知識
J17_0769A10: なり。これを聞ながらなんぞむなしく月日を送らん
J17_0769A11: や。今より後ながく世縁をすて。誓ふて菩提をもと
J17_0769A12: めんと。終に寺を退いて。いづくともなくゆきさり
J17_0769A13: ぬ。
J17_0769A14: ○玆におゐて。師つらつらおもへらく學侶にまじは
J17_0769A15: れば名聞の繩の爲に縛せられ。檀越にちかづけば利
J17_0769A16: 養のやいばの爲に害せらるはなはだ怖畏すべし。佛
J17_0769A17: 天いまだわれをすてたまはずこれらの奇事をもて
J17_0769B18: 我不信麁暴を懲さしめたまふにこそあらめ。これま
J17_0769B19: た我ための善知識なりとよろこびたまへりあろ人のいはく師凡そ
J17_0769B20: 八度まてかくのごとき奇事を見たまひ隱逸の心いやましければ以八と稱せらるといひつたへたり。いまただ二事をつとふ。その餘はさ
J17_0769B21: らにかんかふべしそれより以後はますます名利の桎梏をさけ東
J17_0769B22: 西を遊行し南北にへんれきし。或ときはつぶねとな
J17_0769B23: り。あるときはかたいとなりて。密修暗練することあた
J17_0769B24: かも玄賓增賀のごとく。また心戒覺英に似たり。天台
J17_0769B25: 止觀の三術ゆたかにおこなふところなり。衣食とも
J17_0769B26: に節儉にして高風古德にはづることなし。師平生所持の袈裟一領
J17_0769B27: いま現に光明院にあり體はあらもめん色は黑量は七條はなはだそまつなるものなり水邊林下僧坊塵寰
J17_0769B28: さだまれる住所なく。諸州の名山勝槪いたらざると
J17_0769B29: ころなし。時にしたがひ所にまかせてねんぶつを弘
J17_0769B30: 通したまへり。かつてしばしば勢州山田の源福寺石
J17_0769B31: 州都川の杖溪寺に往來せり。洛東一心院にも幽捿し。
J17_0769B32: あるひはよし野西行庵の舊せきにも住居せらる。
J17_0769B33: ○師一時筑後の善導寺にゆき祖師堂にいりて晨香夕
J17_0769B34: 燈つとめて三祖善導大師圓光大師聖光上人の鴻恩を報謝せらる。ときに

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