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J2540 弾誓上人絵詞伝 宅亮 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0695A01: 又上人利濟の餘澤なり。
J17_0695A02: ○上人それより尾州に赴き。海邊の里に尋入給ふに
J17_0695A03: 移り替る世の習ひ。道もなきまで荒果たり。母堂の
J17_0695A04: 石塔に打向ひ。心の及ぶかぎり至誠に念佛回向し給
J17_0695A05: ひて。都路にぞをもむかれける。
J17_0695A06: ○慶長十三年花洛に上り先誓願寺に詣て三日の間籠
J17_0695A07: 居念佛せられたり。其後むかし見置給へる古知谷に
J17_0695A08: わけ入り。松の小陰を庵にして所持の鉦鼓を枝にか
J17_0695A09: け。苔むす岩の上に坐し西の山合に打向ひ。明暮念
J17_0695A10: 佛し給へり。樵夫これを聞付て木の間をわけて尋ね
J17_0695A11: 入けるが。亂髮の異相を怪しみただちに逃んとする
J17_0695A12: を。呼返し。十念を授け給へば忽ち信心を發起し
J17_0695A13: ぬ。常隨給仕の弟子共は跡をしたひ岩窟を栖として
J17_0695A14: 念佛す。次第に聞傳へてうちむれうちむれ貴賤群集し。
J17_0695A15: 念佛を授り名號を受て化益日日に昌なり。終に佛閣
J17_0695A16: 僧舍の營構に及ひぬ。よつて上人これを名付て一心
J17_0695A17: 歸命决定光明山阿彌陀寺と號せらる。時に本尊を得
J17_0695B18: ばやと思しけるに何くともなく老翁一人來り彌陀尊
J17_0695B19: を授けて去る。感得本尊是なり。又上人手づから自
J17_0695B20: 身の肖像を彫刻し給ふ。植髮の尊像と號す。今現に
J17_0695B21: あり此像古今種種の靈驗あり。
J17_0695B22: ○慶長十四年三月十五日上人自から常行念佛の開白
J17_0695B23: を成し給へり。龍神歸依して常に庭前の松に燈明を
J17_0695B24: 挑けて供養しける。又或時龍神現じ來りて日月の硯
J17_0695B25: を上人に獻じ奉る。上人此硯にて名號を書給ふに。
J17_0695B26: 水自から涌出しけるとなん。今現に存在して靈寶た
J17_0695B27: り。又或時文殊菩薩來臨ありて上人の弘法を隨喜
J17_0695B28: し。天竺の貝多羅葉二枚を授與し給ふ。此貝葉に梵
J17_0695B29: 文あり今時書所の字躰と同じからず是又今現にあり
J17_0695B30: 又或時上人かの彌陀佛より給はりたる鐵杖を持て傍
J17_0695B31: 成岩角を穿給へば淸水涌出たり。此水を以て常に佛
J17_0695B32: 前の供養物を營む。世に傳へて御杖の水と號する是
J17_0695B33: なり此水を服用して現益を得る者多し。種種の難病
J17_0695B34: を除き或は狂亂を治し或は臨終に正念に成りて往生

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