浄土宗全書を検索する
AND検索:複数の検索語をスペースで区切って入力すると、前後2行中にそれらを全て含む箇所を検索します。
巻_頁段行 | 本文 |
---|---|
J17_0695A01: | 又上人利濟の餘澤なり。 |
J17_0695A02: | ○上人それより尾州に赴き。海邊の里に尋入給ふに |
J17_0695A03: | 移り替る世の習ひ。道もなきまで荒果たり。母堂の |
J17_0695A04: | 石塔に打向ひ。心の及ぶかぎり至誠に念佛回向し給 |
J17_0695A05: | ひて。都路にぞをもむかれける。 |
J17_0695A06: | ○慶長十三年花洛に上り先誓願寺に詣て三日の間籠 |
J17_0695A07: | 居念佛せられたり。其後むかし見置給へる古知谷に |
J17_0695A08: | わけ入り。松の小陰を庵にして所持の鉦鼓を枝にか |
J17_0695A09: | け。苔むす岩の上に坐し西の山合に打向ひ。明暮念 |
J17_0695A10: | 佛し給へり。樵夫これを聞付て木の間をわけて尋ね |
J17_0695A11: | 入けるが。亂髮の異相を怪しみただちに逃んとする |
J17_0695A12: | を。呼返し。十念を授け給へば忽ち信心を發起し |
J17_0695A13: | ぬ。常隨給仕の弟子共は跡をしたひ岩窟を栖として |
J17_0695A14: | 念佛す。次第に聞傳へてうちむれうちむれ貴賤群集し。 |
J17_0695A15: | 念佛を授り名號を受て化益日日に昌なり。終に佛閣 |
J17_0695A16: | 僧舍の營構に及ひぬ。よつて上人これを名付て一心 |
J17_0695A17: | 歸命决定光明山阿彌陀寺と號せらる。時に本尊を得 |
J17_0695B18: | ばやと思しけるに何くともなく老翁一人來り彌陀尊 |
J17_0695B19: | を授けて去る。感得本尊是なり。又上人手づから自 |
J17_0695B20: | 身の肖像を彫刻し給ふ。植髮の尊像と號す。今現に |
J17_0695B21: | あり此像古今種種の靈驗あり。 |
J17_0695B22: | ○慶長十四年三月十五日上人自から常行念佛の開白 |
J17_0695B23: | を成し給へり。龍神歸依して常に庭前の松に燈明を |
J17_0695B24: | 挑けて供養しける。又或時龍神現じ來りて日月の硯 |
J17_0695B25: | を上人に獻じ奉る。上人此硯にて名號を書給ふに。 |
J17_0695B26: | 水自から涌出しけるとなん。今現に存在して靈寶た |
J17_0695B27: | り。又或時文殊菩薩來臨ありて上人の弘法を隨喜 |
J17_0695B28: | し。天竺の貝多羅葉二枚を授與し給ふ。此貝葉に梵 |
J17_0695B29: | 文あり今時書所の字躰と同じからず是又今現にあり |
J17_0695B30: | 又或時上人かの彌陀佛より給はりたる鐵杖を持て傍 |
J17_0695B31: | 成岩角を穿給へば淸水涌出たり。此水を以て常に佛 |
J17_0695B32: | 前の供養物を營む。世に傳へて御杖の水と號する是 |
J17_0695B33: | なり此水を服用して現益を得る者多し。種種の難病 |
J17_0695B34: | を除き或は狂亂を治し或は臨終に正念に成りて往生 |