浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0055A01: | 人ありけり。次生にそのむくひをなす。いま有起の |
J17_0055A02: | 善を修す、彼功德すなはち大善根となる。願は今度 |
J17_0055A03: | 妄縁をたちて、彼宿意をわすれん。意趣をやすめず |
J17_0055A04: | ば、いづれの世にか、生死の紲をたたん。梵網心地 |
J17_0055A05: | 戒品に云、みづからもころし、人ををしへてもころ |
J17_0055A06: | し、方便してもころし、ころすをもほめ、ころすを |
J17_0055A07: | みても隨喜し、乃至呪してもころす。因縁報果、み |
J17_0055A08: | なころすにおなじ。よの九戒、又又如此。然者一 |
J17_0055A09: | 向に往生極樂をいのりて、自他平等利益をおもふべ |
J17_0055A10: | しといひおはりて、心をただしくして、西方界にむ |
J17_0055A11: | かひて、高聲に念佛して、ねむるがごとくにしてお |
J17_0055A12: | はりぬ。 |
J17_0055A13: | 生年九歳なる子息、敵人の頭に、少箭をいた |
J17_0055A14: | てける。葬送中隱の間、念佛報恩ををくる刻、 |
J17_0055A15: | 雁塔をたてて、鳧鐘をならし、烏瑟の妙相を |
J17_0055A16: | あらはして、鷲嶺の眞文を開題し、鶖子が智 |
J17_0055A17: | 辯をむかへて、鳥方にをくらん事をのぞむ。 |
J17_0055A18: | 時國遭難の圖 |
J17_0055B19: | 同年のくれ、同國のうち、菩提寺 |
J17_0055B20: | の院主觀覺得業の弟子になり給。 |
J17_0055B21: | 觀覺得業の許へ入室の圖 |
J17_0055B22: | 一。師匠の命によりて、比叡山にのぼるべきよし侍 |
J17_0055B23: | ける時、乳房のははに、いとまを申とて、大師釋尊 |
J17_0055B24: | は、十九の御年、父の大王にしのび給て、ひそかに |
J17_0055B25: | 王宮をいでたまひ、今小童は、生母にいとまを申て、 |
J17_0055B26: | 二親を佛道に入たてまつらん。夫流轉三界中、恩愛 |
J17_0055B27: | 不能斷、棄恩入無爲、眞實報恩者文と承ば、今日よ |
J17_0055B28: | りのち、こひしく、ゆかしく、我をすてて、うらめ |
J17_0055B29: | しとおぼしめさるな、三河守大江定基は、出家して |
J17_0055B30: | 大唐へわたり侍し時は、老母にゆるされをかうむり |
J17_0055B31: | てこそ、彼國にして圓通大師の號をかうむり、本朝 |
J17_0055B32: | の名をもあげ給しか。ゆめゆめこの童をこそちちの |
J17_0055B33: | 形見として、朝に覲へ暮に眤びん事をわすれて、生 |
J17_0055B34: | るる覺山にこもりて、ふかくみちびく師とならん事 |
J17_0055B35: | をおぼしめせと、かきくどき給しかば、母ことはり |
J17_0055B36: | におれて、みどりのかみを、かいなでで、涙ばかり |