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J2380 四巻伝 耽空 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0055A01: 人ありけり。次生にそのむくひをなす。いま有起の
J17_0055A02: 善を修す、彼功德すなはち大善根となる。願は今度
J17_0055A03: 妄縁をたちて、彼宿意をわすれん。意趣をやすめず
J17_0055A04: ば、いづれの世にか、生死の紲をたたん。梵網心地
J17_0055A05: 戒品に云、みづからもころし、人ををしへてもころ
J17_0055A06: し、方便してもころし、ころすをもほめ、ころすを
J17_0055A07: みても隨喜し、乃至呪してもころす。因縁報果、み
J17_0055A08: なころすにおなじ。よの九戒、又又如此。然者一
J17_0055A09: 向に往生極樂をいのりて、自他平等利益をおもふべ
J17_0055A10: しといひおはりて、心をただしくして、西方界にむ
J17_0055A11: かひて、高聲に念佛して、ねむるがごとくにしてお
J17_0055A12: はりぬ。
J17_0055A13: 生年九歳なる子息、敵人の頭に、少箭をいた
J17_0055A14: てける。葬送中隱の間、念佛報恩ををくる刻、
J17_0055A15: 雁塔をたてて、鳧鐘をならし、烏瑟の妙相を
J17_0055A16: あらはして、鷲嶺の眞文を開題し、鶖子が智
J17_0055A17: 辯をむかへて、鳥方にをくらん事をのぞむ。
J17_0055A18: 時國遭難の圖
J17_0055B19: 同年のくれ、同國のうち、菩提寺
J17_0055B20: の院主觀覺得業の弟子になり給。
J17_0055B21: 觀覺得業の許へ入室の圖
J17_0055B22: 一。師匠の命によりて、比叡山にのぼるべきよし侍
J17_0055B23: ける時、乳房のははに、いとまを申とて、大師釋尊
J17_0055B24: は、十九の御年、父の大王にしのび給て、ひそかに
J17_0055B25: 王宮をいでたまひ、今小童は、生母にいとまを申て、
J17_0055B26: 二親を佛道に入たてまつらん。夫流轉三界中、恩愛
J17_0055B27: 不能斷、棄恩入無爲、眞實報恩者と承ば、今日よ
J17_0055B28: りのち、こひしく、ゆかしく、我をすてて、うらめ
J17_0055B29: しとおぼしめさるな、三河守大江定基は、出家して
J17_0055B30: 大唐へわたり侍し時は、老母にゆるされをかうむり
J17_0055B31: てこそ、彼國にして圓通大師の號をかうむり、本朝
J17_0055B32: の名をもあげ給しか。ゆめゆめこの童をこそちちの
J17_0055B33: 形見として、朝に覲へ暮に眤びん事をわすれて、生
J17_0055B34: るる覺山にこもりて、ふかくみちびく師とならん事
J17_0055B35: をおぼしめせと、かきくどき給しかば、母ことはり
J17_0055B36: におれて、みどりのかみを、かいなでで、涙ばかり

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