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過去帳

提供: 新纂浄土宗大辞典

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かこちょう/過去帳

供養のために死者の法名や死亡年月日などを記す帳簿。霊簿、霊名簿、鬼簿きぼ鬼籍簿きせきぼなどともいう。古くは源信が主唱した二十五三昧会で、命終した結衆の名を記し一期いちごの行状をも記し留めたとされる、長和二年(一〇一三)始記の『首楞厳院二十五三昧結縁過去帳』(『恵心僧都全集』一・六七七)などがある。浄土宗では元弘三年(一三三三)に近江国番場で討死にした陸波羅(六波羅)方の武将を供養するために記した『蓮華寺過去帳』などが有名である(塙保己一編『群書類従』五一四)。過去帳の形式には、一日から晦日までの日ごとに記す日牌式のものと、年次を追って書き継ぐ逐年式のものがある。日牌式過去帳は龍牙興雲『持宝通覧』下、『真俗仏事編』三に「夫れ霊簿は是れ経軌の中に出るものにあらず。唐の戒禅師天子の勅をうけて、一月三十日に三十仏を配す。朔日ついたち定光仏をはじめとして、晦日みそか釈迦如来に終る。是をしるして礼仏をして、人天の福を修せしむるより起れり。今に世俗の霊簿に毎日仏名書載かきのするは即ちこれに依れり」(二オ)と記されるように、一日から晦日までの各日ごとに三〇の仏を配した過去帳に、法名・死亡年月・俗名などを記すもので、江戸時代以降に多く用いられるようになった。各家の仏壇に納める先祖の法名を記した過去帳はこの形式である。逐年式のものとしては、永仁三年(一二九五)年から応仁元年(一四六七)までの一七〇年余にわたって天皇・将軍・名僧・公卿・武家等、僧俗の死去年月日を編年体に記した『常楽記』(『群書類従』五一三)や、一遍在世当時の弘安二年(一二七九)から戦国時代末期まで、歴代の遊行上人時衆結縁者の法名を書き継いだ『時衆過去帳』(国重要文化財)などが著名である。江戸時代中期になると徳川幕府の宗教政策である寺請てらうけ制度が確立され、これにともなって各寺院でも死亡した檀徒の法名を記す過去帳が作られるようになった。


【執筆者:熊井康雄】