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歎異抄

提供: 新纂浄土宗大辞典

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たんにしょう/歎異抄

一巻。著者不詳ながらも、本文中に出る唯円とするのが一般的である。唯円の没年は正応二年(一二八九)(『諸寺異説弾妄』)と伝えられ、文中には「露命わつかに枯草の身にかかりて」(真宗聖典九二一)とあり、晩年の執筆であることがわかる。親鸞没後、門弟らの信心が変容し、親鸞の教えが誤って伝達されることを歎異し(歎かわしく思い)、親鸞語録を軸として当時の異義を批判したもの。序文・師訓篇十条・中序・歎異篇八条・後序・流罪記録で構成されている。一説に、蓮如が禁書としていたが、明治期に大谷派僧清沢満之きよざわまんしらによって世に流行したとされる。しかし、江戸期に何度も刊行され、一般庶民への影響も大きかったことは注意が必要であり、第三条の悪人正機説など、時代を超えて影響力をもったことが窺われる。また、親鸞語録集などとされることがあるが、本書の意図は、異義批判を通して親鸞のいう真実信心に回帰することであることを忘れてはならない。


【所収】『浄土真宗聖典』(本願寺出版部、一九八五)、『真宗聖教全書』二(大八木興文堂、一九四一)


【参考】多屋頼俊『歎異抄新註』(法蔵館、一九七〇)、安良岡康作『歎異抄全講読』(大蔵出版、一九九〇)、西田真因『歎異抄論』(『西田真因著作集』一、法蔵館、二〇〇二)


【執筆者:藤田真隆】