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文殊菩薩

提供: 新纂浄土宗大辞典

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もんじゅぼさつ/文殊菩薩

文殊はⓈMañjuśrīの音写語で、Ⓢśrīを省略した形。文殊師利もんじゅしり曼殊室利まんじゅしり濡首じゅしゅなどとも音写する。意訳して妙吉祥みょうきっしょう妙徳みょうとく。その他、文殊師利法王子(ⓈMañjuśrī-kumārabhūta)とも呼ばれる。ここのⓈkumārabhūtaは、厳密には「法王子」に対応せず「童真」、つまり出家して禁欲を守る菩薩の意味。そこに無仏の世における仏の後継者(法王子)の意味が読み込まれている。特に『般若経』において活躍し、「三人よれば文殊の智慧」といわれるように智慧象徴として有名な菩薩。その一方で例えば『首楞厳三昧しゅりょうごんざんまいきょう』『阿闍世王経あじゃせおうきょう』などでは、無始以来輪廻に止まり諸菩薩の父母として教導する姿が強調される。『法華経』においても釈尊の以前の師として登場する。智慧慈悲の両面を併せ持つも、智慧を中心にしながら慈悲行を行う点に特徴がある。多くの大乗論書は、冒頭に文殊に対する帰敬偈をのせる。文殊を大乗興起時代の実在人物とする説もあるが詳細は不明。文殊信仰は各地域に広まり多彩な展開を遂げ、中でも中国山西省の五台山霊場は有名。円仁は五台山巡礼の後、比叡山に文殊楼を営んだ。帰朝後の彼は台密発展に尽力し、その行法の一つに息災法「文殊八字法」がある。また西大寺律宗の叡尊(一二〇一—一二九〇)、忍性(一二一七—一三〇三)が文殊供養として社会慈善活動を行ったことも名高い。法然念仏を勧める文殊の説(『念仏大意』の法照大聖竹林寺記』引用)を紹介したり、阿弥陀仏の遍在性をうたう例証として、文殊の遍在性を挙げる(『逆修説法五七ごしち日の『三国伝記』五引用)。形像としては普賢菩薩と共に釈迦三尊を形成する姿が一般的。また安倍文殊院の騎獅文殊菩薩像(国宝)のように獅子に乗る姿も有名。密教系では、文殊を象徴する真言の字数と頭頂のもとどりの数によって姿や持物が異なる。眷属として八大童子が知られる。


【参考】平川彰「大乗仏教の興起と文殊菩薩」(印仏研究一八—二、一九七〇)、大南龍昇「三昧経典と文殊菩薩」(同二二—二、一九七四)、速水侑『菩薩 仏教学入門』(東京美術、一九八二)、平川彰「文殊師利法王子の意味と一生補処」(『印度哲学仏教学』一〇、一九九五)、小澤憲珠「九 文殊部」(勝崎裕彦他編『大乗経典解説事典』北辰堂、一九九七)


【参照項目】➡普賢菩薩


【執筆者:中御門敬教】