持戒
提供: 新纂浄土宗大辞典
じかい/持戒
戒律をたもつこと。破戒・捨戒に対することば。仏教に帰依する者の根本として生活態度を律すること。原語はⓈśīlaで、ただ戒と訳されることもある。仏道実践の基礎として、三学(持戒・禅定・智慧)の筆頭に数えられる。大乗仏教の実践徳目である六波羅蜜では布施に次ぐ第二に数えられる。仏門に入る者は、仏・法・僧に帰依することを表明する「三帰依」に始まり、僧俗を一貫する「五戒」を受け、修行者としての各々の立場によって定められた禁戒(制戒)を守っていく。法然は、弥陀の本願が万機を摂する平等慈悲に基づいており、極楽往生の要件としては持戒破戒を問わず、念仏一行が往生業と定められていることを終始強調している。その一方で円頓戒の正統を受け継ぎ、戒に則った堅固な生活を送っており、『七箇条制誡』において「戒はこれ仏法の大地なり」(昭法全七八八)と破戒無慚の弟子達を誡めている。また、当代随一の清僧と評価され、授戒を機縁に皇族・貴族からも深い信仰を得て念仏をより広い階層に弘通している。
【執筆者:渋谷康悦】