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和語灯録日講私記

提供: 新纂浄土宗大辞典

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わごとうろくにっこうしき/和語灯録日講私記

全七巻。義山素中による、『和語灯録』および『拾遺和語灯録』の講義録。『和語灯録』および『拾遺和語灯録』全七巻は、道光が編集した法然の和語の文献語録であり、『日講私記』は、そこに収録される法然の文献を講義注釈したものである。正徳五年(一七一五)に義山講述の第一巻が成立するが、義山が入寂し未完だったので、弟子素中が遺志を継いで補完、享保三年(一七一八)に全七巻を大成した。跋文ばつぶんに「日日之を講じ之を記するに、積もりて数紙を得る故に、名づけて日講私記と曰ふ」(浄全九・八三五下)とあって、日々の講義の積み重ねにより、講義録が蓄積されたことがうかがえる。義山は享保二年(一七一七)に寂しているので、わずか一、二年ほどで完成させていることになり、『日講私記』の分量を鑑みれば、「日日之を講じ之を記する」という表現も首肯できる。義山の手になる第一巻のはじめから、例えば『和語灯録』の「黒谷上人語灯録第十一幷序」という題号や巻数、「幷序」という字義まで、いわゆる逐語的な解釈を行っている。その姿勢は二巻以降も基本的に素中に受け継がれており、義山が『四十八巻伝』を注釈した『翼賛』と、注釈が共通する場合、そちらに譲るという手法をとり、素中義山への深い信頼が見て取れる。注釈で引用される文献は、浄土系文献はもちろん、天台や南都系文献、梵語文献から国学、文学、漢籍等と非常に多岐に渡り、義山素中の博覧強記に驚かされるとともに、一つの用語に可能な限り多くの引用や注釈を加え、客観的に記述して説明しようとしており、その学問姿勢が偲ばれる。『和語灯録』は、その成立が『四十八巻伝』を三五年程度遡り、法然の文献を集成したものの中でも重要な位置を占めるものであり、その注釈書としての『日講私記』は、法然理解に欠かせないといえるだろう。


【所収】浄全九


【参照項目】➡和語灯録拾遺和語灯録


【執筆者:伊藤真宏】