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ヒンドゥー教

提供: 新纂浄土宗大辞典

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ヒンドゥーきょう/ヒンドゥー教

中世インドのイスラム教徒が、自分たち以外のインド人をペルシャ語で「ヒンドゥー」(Hindu、インダス河流域の人々)と呼んだことに由来し、彼らの宗教・文化をヒンドゥー教(Hinduism)と呼ぶ。広義にはバラモン教も含める場合があるが、紀元前五世紀を中心とするヴェーダによるバラモン至上の規範の崩壊にともない、バラモン教を源泉としながらも民間信仰などと融合して大衆化ともいうべく自然に発生したもので、起源も明確でない。「天啓書」であるヴェーダ聖典に権威を認めつつも、実際には二大叙事詩『マハーバーラタ』『ラーマーヤナ』、それぞれの神の神話百科的な広がりを見せる『プラーナ』『マヌ法典』をはじめとする多数の法典など、「古伝書」といわれるさまざまなものを聖典として信奉し、人々の生活を規定する法制、習俗なども包括する。このような聖典と思想体系の成立をはじめとして、紀元一~二世紀以降の宗派の成立、七~九世紀に起こるバクティ(献身的信仰)思想や、性愛と結びつくタントリズムの形成、一三世紀以降に起こるイスラム教の台頭、一九世紀以降のイギリスの植民地支配によるキリスト教の伝播や西洋文明との接触などの過程で展開し、宗教という概念では捉えがたいインド文化そのものとして根をおろす。信仰の対象としてはヴィシュヌ神、シヴァ神、および、中世以前はブラフマー神(梵天)の三神が主流をなし、ヴィシュヌ派、シヴァ派などの宗派も成立した。ヴィシュヌ神は、叙事詩以来、主要な神とされ、ラクシュミー(吉祥天)を妃とし、クリシュナ、ラーマなどの一〇種の権化によって人々を救済する。仏教の開祖ブッダも九番目の権化として神話内に取り込み、仏教聖地もヴィシュヌの聖地として同化してしまう。シヴァ神はすべてを破壊するマハーカーラ(大黒天)として恐れられる一方、恩恵を与え、生殖をつかさどる神としてリンガ(男根)の形でも崇拝される。パールヴァティーを妃とし、ガネーシャ(聖天)とスカンダ(韋駄天)という息子をもつ。またサラスヴァティー(弁才天)やヤマ(閻魔)など日本で崇拝されている多くの神々もヒンドゥー教を源とする。


【参照項目】➡バラモン教


【執筆者:吹田隆道】