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アビダルマ

提供: 新纂浄土宗大辞典

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アビダルマ/ⓈAbhidharmaⓅAbhidhammaⓉchos mngon pa

部派仏教聖典である三蔵経蔵・律蔵・論蔵)の一つ。論蔵のこと。仏弟子たちが釈尊の説いた経典の意味を分析するとともに、体系的に綜合した文献群の総称。阿毘曇あびどん、毘曇、阿毘達磨と音写され、対法、論などと訳される。「教え(ダルマ)に対する考察」が本来の意味と考えられるが、伝統的には「すぐれた教え」ともされる。説一切有部では無漏の智慧択法ちゃくほうすなわち存在の分析)と解釈される。すでに初期経典の中で釈尊の教えを分析・綜合する試みが行われ、それが経典の注釈に発展し、ついに経典と離れて独自の教学が展開して完成されたが、後に教義体系をまとめた綱要書が作られた。『俱舎論』はその代表である。教団分裂とともに各部派ごとに独自のアビダルマが生まれたと考えられ、経・律よりも互いに内容的に異なる部分が多い。しかし部派仏教ではアビダルマこそが釈尊の真意を体現し、覚りに直結する仏説として最高の地位を与えられた。アビダルマの意義は、歴史上初めて釈尊の教えを体系的にまとめ、仏教用語の厳密な定義を行い、後代の仏教に決定的な影響を及ぼした点にある。特に説一切有部のアビダルマが重要であるため、『俱舎論』は大乗仏教圏でも広く学習されてきた。法然は、『浄土初学抄』において、「聡明論そうめいろん」(昭法全八四一)と讃えられる三〇巻の『俱舎論』も、往生の教えを説かないからわずか四紙の『阿弥陀経』にも及ばないではないかと述べている。他方、自分が空海を批判したことを、世親が『俱舎論』を著作して五百羅漢の作った『婆沙論』を批判したことになぞらえている(『四十八巻伝』聖典六・四五~六)。源信良忠らは浄土教家であったと同時に『俱舎論』に通じた学匠でもあり、その素養はかれらの教義の確立に大きく寄与した。


【参考】櫻部建・上山春平『仏教の思想2 存在の分析〈アビダルマ〉』(角川書店、一九九六)、源信『大乗対俱舎鈔』(仏全八五・一九、一九八二)


【参照項目】➡三蔵俱舎論


【執筆者:本庄良文】