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頓漸二教

提供: 新纂浄土宗大辞典

とんぜんにきょう/頓漸二教

中国仏教の展開過程において形成されていった釈尊の教説の順序、および釈尊の教説の優位性を示す教判論の一種。もともとは浅から深へと展開する段階的な修行のことを「漸」といい、また如来の教説を「頓」としていた。その後、慧観劉虬りゅうきゅうらによって『華厳経』を頓教とし、その他の経典を漸教とする『華厳経』を中心とした教判にこの頓漸二教が使用されるようになり、さらに慧光によって一乗三乗および大乗小乗の観念をも内包した教判として使用されるようになっていった。慧光以後、浄影寺慧遠は局・漸・頓の教判を提示し、大乗を「頓」と規定している。また智儼や法蔵も華厳一乗説を展開する際に、独自の頓漸二教説を提示している。なお法然は『無量寿経釈』に「天台・真言みな頓教と名づくといえども、惑を断ずるが故に、なおこれ漸教なり。いまだ惑を断ぜず三界の長迷を出過するが故に、この教をもって頓中の頓とせるなり」(昭法全六八)と説き、おそらく華厳教学を意識しつつも善導教学を根拠として阿弥陀仏信仰こそが頓中の頓であると主張している。


【参照項目】➡頓漸二教判


【執筆者:柴田泰山】