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転輪聖王

提供: 新纂浄土宗大辞典

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てんりんじょうおう/転輪聖王

世界を武力なしに統一するインドの王の理想像。Ⓢcakravarti-rāja。転輪王、輪王ともいう。「輪」(Ⓢcakra)は戦車を象徴するが、一切の障害を破り、降伏させる力のある宝の輪を空中より得て転がし、争いなく須弥山四洲を統治することから転輪聖王と名付けられた。また転輪聖王は、力で世界を統一する強力転輪王(Ⓢbala-cakravarti-rāja)を超えた最も優れた王と考えられた。仏教のみならずジャイナ教やヒンドゥー教にも認められるが、仏教では特に三十二相をもつものが家に留まれば転輪聖王となり、出家すればブッダとなるとする。また王家に生まれた釈尊出家していなければ成り得ていた、とされる理想の王として対比される。転輪聖王七宝、すなわち輪宝・象宝・馬宝・珠宝・女宝・居士宝・主兵臣宝の七つ、および大富・美男・無病・長寿の四徳を具え、千人の息子を得るとされる。『婆沙論』三〇や『俱舎論』一二には、転輪聖王の輪宝には金輪・銀輪・銅輪・鉄輪の四種の区別があるとして四種の輪王を説き、鉄輪王は一洲を、ないし金輪王は四洲を統治するとする。これを受けて『仁王般若経』上ではそれぞれ四種の輪王を菩薩の行位に配置し、鉄輪王を十信位、銅輪王を十住位、銀輪王を十行位、金輪王を十回向位とする。また『悲華経』では転輪聖王である無諍念(ⓈAraṇemin)が五十二願を立て、未来に阿弥陀仏となる授記を受ける。『法事讃私記私鈔』中に「転輪王とは無諍念王、即ち弥陀の因位なり」(浄全四・一七八下)というのはこれを受けたもの。


【執筆者:吹田隆道】