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蓮華

提供: 新纂浄土宗大辞典

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れんげ/蓮華

蓮の花。仏典に説かれる蓮はヤマモガシ目ハス科ハス属(Nelumbo)、スイレン目スイレン科スイレン属(Nymphaea)の総称といえる。ともに多年生の水草である。サンスクリット語ではⓈpadmaで総称される場合が多い。『阿弥陀経』において極楽の「池の中に蓮華あり」(聖典一・三一六/浄全一・五二)と説かれる蓮華がpadmaであり、これに赤・青・白・黄の四色があると説かれている。仏典における蓮華はおおよそこの赤・青・白・黄の四色が説かれる。①赤蓮華あるいは紅蓮華。Ⓢpadma。鉢特摩、鉢頭摩などと音写される。padmaはハスの総称でもあるが、とくに薄赤色の、いわゆるハスを指す語である。②青蓮華。Ⓢutpala。優鉢羅、漚鉢羅などと音写される。またⓈnīlotpalaも青蓮華を意味する。③白蓮華。Ⓢpuṇḍarīka。『妙法蓮華経』の蓮華白蓮華のことである。僧叡の『妙法蓮華経』序によれば、白蓮華の盛りを分陀利華(Ⓢpuṇḍarīka)、落下する頃を迦摩羅(Ⓢkamalaと考えられる)、いまだ咲かない頃を屈摩羅(Ⓢkumāra)と呼ぶとされる。またⓈsaugandhikaも白蓮華を指すといわれるが、これは青蓮華、あるいは睡蓮と理解されることもある。④黄蓮華。Ⓢkumuda。拘勿頭、拘物頭などと音写される。黄蓮華と訳されるが、白睡蓮を意味すると考えられている。『無量寿経』には「拘物頭華くもつずげ」と音写され、義山はこれについて「拘物頭華とは黄蓮華なり。或いは赤および青色あり」(浄全一四・三八五下)といい、赤や青のものもあると述べている。蓮華は泥の中から花を咲かせるが、決して泥に汚されることがなく、この点が様々な比喩に用いられる。『無量寿経』には「なおし蓮華のごとし。諸もろの世間において、汙染あぜんなきが故に」(聖典一・二五九/浄全一・二三)と説かれ、世間において汚されない菩薩の在り方が蓮華に例えられる。また花だけではなく蓮の葉が水をはじき、水に汚されない点が『スッタニパータ』八一一などで比喩として説かれている。さらに蓮の花托は、仏・菩薩台座とされ、極楽に生まれる場合も蓮のうてな往生するとされる。蓮華は、多くの仏典に現れ、様々に説示され、仏典において最も重要視される花ということができよう。


【参考】中村元編著『仏教植物散策』(東京書籍、一九八六)


【参照項目】➡拘物頭華分陀利華蓮台


【執筆者:石田一裕】