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華鬘

提供: 新纂浄土宗大辞典

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けまん/華鬘

仏前を荘厳するために、堂内の長押なげしなどにかける団扇うちわ形にかたどった荘厳具。花鬘とも。Ⓢmālā。原語は花環、花冠や首飾りを意味する。インドでは生花を糸で綴り、くび飾りまたは装身具とし、あるいは仏の供養に用いた。日本では『日本書紀』持統天皇元年(六八七)条に「花鬘を以て殯宮もがりのみやたてまつる」とある花鬘が初見である。華鬘代は生花以外の他材で代用した華鬘を意味するという。堂内の荘厳としても用いられ、この時には生花の代わりに牛皮ごひ・金銅・木・ガラス玉などを用いた。これは厨子正面の斗帳とちょうの前等に懸けられる恒久的な荘厳具となった。上代のものは銅板を切り透した裁文さいもん華鬘(裁断した文様という意)で、華鬘本来の花輪の花形裁文と、かずら草風の雲に乗った鳳凰が宝相華をはさんで対向した鳳凰形裁文があり、また聖武天皇の葬儀に用いた布製の華鬘(羅花鬘)が正倉院に蔵されている。平安時代になって、外形を団扇形にかたどり、中央に総角あげまき風の結び紐を表し、上部に吊鐶つりかん金具・下部に鈴や露形金具を垂らした団扇形華鬘が通形となった。中尊寺金色堂の金銅華鬘は、総角をはさんで対向する迦陵頻伽かりょうびんがと宝相華文を表したものが有名である。動植物文のほかには種子華鬘もある。また花つなぎ(花輪)式華鬘、玉つなぎ式華鬘(玉華鬘)などの形式がある。この華鬘の代わりに幕や水引の中央に華鬘結びの組紐を吊り下げることがある。『四十八巻伝』九には、後白河法皇が押小路の仙洞御所で如法経供養をしたときの項に、長押に白の華鬘と幡を掛けている図がある。


【参考】「仏・菩薩と堂内の荘厳」(『日本の美術』二八一、至文堂、一九八九)


【執筆者:西城宗隆】